今回は相談事例を通じて、遺産分割時に用いる不動産の評価額についてご紹介します。
亡夫の財産について遺産分割をしたいと考えています。私たちには子がおらず、夫の両親もすでに亡くなっているため、相続人は私と夫の姉の2人です。主な財産は自宅不動産と預貯金で、不動産は現在居住している私が相続したいと考えていますが、遺産分割の際、不動産はどのような評価額を基に話し合いをすればよいでしょうか。
不動産には固定資産税評価額、相続税評価額、時価など様々な価格の捉え方がありますが、遺産分割の際には、基本的に相続人全員の合意があればどのような評価額を基にしても問題ありません。
各相続人が取得する遺産の割合についても、法定相続分は定められていますが(民法900条)、相続人全員の合意があれば法定相続分に関わらず、分割の内容や取得割合を自由に定めることができます(民法907条)。
価格の基準としては、以下の評価額があります。
(1)固定資産税評価額
公示地価の約7割を目安に設定されているといわれています。
不動産ごとに価格が決定されており、相続税評価のように単価を調べる手間や計算が不要なため最も扱いやすいものの、実際の取引価格よりも低いことが多いため、不動産を相続しない相続人の合意が得られない可能性があります。
(2)相続税評価額(路線価、倍率評価)
公示地価の約8割を目安に設定されているといわれています。路線価は国税庁が毎年発表しており、インターネットで調べることができるため、不動産鑑定評価とは異なり、費用をかけずに参照することができます。こちらも実際の取引価格よりは低い場合が多いため、合意を得られない可能性があります。
(3)不動産仲介業者による査定
不動産仲介業者等が算出する売却見込み額です。査定対象の物件と条件が似た直近の近隣の取引事例を参考に査定する方法が多く採用されています。依頼先によって金額に多少の違いが出ることがあります。
(4)不動産鑑定評価
不動産鑑定士が不動産鑑定評価に関する法律に基づいて土地や建物などの適正な地価、価格などを判断したものです。最も信頼性が高く、遺産分割調停・審判においては重宝されています。
ただし、不動産鑑定士による評価は一般的に費用が高額になることが多く、相続人が費用負担を望んでいない場合は、調停・審判においてもこのほかの評価の使用が認められています。
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