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 マンション価格の高騰による相続税評価への影響はありますか?

 最近、首都圏を中心にマンション価格がかなり高騰しているとのニュースをよく見聞きします。相続税評価への影響はないのでしょうか。

 国税庁はマンションの「相続税評価額」について、適正化を検討するための有識者会議を設置し、評価の見直しに着手しています。今後、マンションに係る相続税等の評価方法が見直されるものと思われます。

1.現在のマンションの市況について

 国土交通省が公表している不動産価格指数によると、2010年を100としたマンション(全国)の価格指数は、2023年1月時点では189.4と2倍近くまで上昇しています。

 

 また、民間の調査会社である不動産経済研究所が公表している「首都圏 新築分譲マンション市場動向」(2023年4月)によると、首都圏の新築分譲マンションの平均価格は7,747万円、特に東京23区は1億1,773万円であり、一般的なサラリーマン世帯では手を出しにくい水準まで高騰しているといえます。

2.マンションの相続税評価の方法について

 相続税法では、相続等により取得した財産の価額は「当該財産の取得の時における時価(客観的な交換価値)」によるものとされており、その評価方法は国税庁の財産評価基本通達に定められています。

 マンションの相続税評価の方法は以下のとおりです。

マンション(一室)の相続税評価額(自用の場合)
=区分所有建物の価額(①)+敷地(敷地権)の価額(②)
  1. ①区分所有建物の価額
    =建物の固定資産税評価額(注1)×1.0
  2. ②敷地(敷地権)の価額
    =敷地全体の価額(注2)×共有部分(敷地権割合)
  1. (注1)「建物の固定資産税評価額」は、1棟の建物全体の評価額を専有面積の割合によって按分して各戸の評価額を算定
  2. (注2)「敷地全体の価額」は、路線価方式又は倍率方式により評価

 上記のように、土地については「相続税路線価」を用いた路線価方式(又は倍率方式)、建物については「固定資産税評価額」をもとに土地は敷地権割合、建物は専有面積の割合により按分して算定されます。このため、敷地面積あたりの戸数が多いマンションは、一戸建て住宅より「相続税評価額」と「時価」との乖離が生じやすいといわれています。

 特に戸数が多く高層階ほど時価が高くなるタワーマンションではその傾向が顕著で、富裕層が相続税対策のために高額なタワーマンションの高層階を購入する、いわゆる“タワマン節税”という言葉も一般的です。

3.行き過ぎた節税対策が問題となるケースも

 なかには「相続税評価額」と「時価」の乖離を利用し、過剰ともいえる節税対策を行ったことにより、その有効性をめぐって相続人が国と裁判で争うケースもみられます。

 特に2022年4月19日の最高裁で、あからさまな相続税の負担軽減を意図したものと認定され、鑑定評価額を適用した課税処分が適当であるとの判決が出たことは、記憶に新しいところです。

4.国税庁の対応について

 このような事例を受けて、令和5年度(2023年度)与党税制改正大綱では、マンションの相続税評価額について、適正化の検討が記載されました。

 この流れを受け、国税庁は市場価格との乖離の実態把握とその要因分析を的確に行った上で、不動産業界関係者などを含む有識者の意見も聴取しながら通達改正を検討することになり、有識者会議がすでに何度か開催されています。

 2023年6月22日に開催された有識者会議では、通達の見直し案が提示されました。今後マンションに係る相続税等の評価方法が、パブリック・コメントを経て改正されるものと思われます。改正による評価への影響を注視する必要があるといえます。

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