お知らせ

相続と財産債務調書

財産債務調書の提出要否の判断基準である財産の価額に、相続により取得した財産の価額も含めるのですか?

Q
今月のご相談

 2023年1月に父が亡くなり、同年9月に相続により財産を5億円程度取得しました。この財産を含めると2023年末の段階での財産の価額の合計は10億円を超えるのですが、私は財産債務調書を提出しなければならないのでしょうか。なお、日本の居住者で確定申告書は毎年提出していますが、所得は年1,500万円程度のため、これまで財産債務調書を提出したことはありません。

A-1
ワンポイントアドバイス

 相続開始年である2023年分の財産債務調書の提出義務の判定において、財産の価額の合計額からその相続等により取得した財産の価額の合計額を除外することができます。そのため、除外して判定した場合には、2023年分は提出する必要がありません。

A-2
詳細解説
1.財産債務調書の提出義務者

 次の①又は②に該当する場合には、一定の事項を記載した財産債務調書を、その年の翌年6月30日までに税務署へ提出しなければなりません。

①所得税の確定申告書を提出する必要がある方又は所得税の還付申告書(一定の還付申告書に限ります。)を提出することができる方で、その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日においてその価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の有価証券等を有する場合
②居住者の方で、その年の12月31日においてその価額の合計額が10億円以上の財産を有する場合
2.相続開始年の場合

 相続開始年(相続の開始の日の属する年)の年分の財産債務調書については、その相続又は遺贈(以下、相続等)により取得した財産又は債務(相続財産債務)を記載しないで提出することができます。この場合において、相続開始年の年分の財産債務調書の提出義務については、上記1の財産の価額の合計額からその相続等により取得した財産の価額の合計額を除外して判定します。

 除外するか否かは選択できます。

3.ご相談の場合

 ご相談のケースを上記1①と②の条件にあてはめますと、以下のとおりです。

  • ①の場合
    所得1,500万円程度<2,000万円
    となるため、この時点で①の条件から外れます。
  • ②の場合
    (a) 相続財産を含めた場合
     財産の価額の合計額≧10億円
    となるため、提出義務が生じます。
    (b) 相続財産を含めない場合
     財産の価額の合計額<10億円
    となるため、提出義務は生じません。
    いずれにするかは、選択が可能です。

 なお、相続開始年の翌年分(2024年分)からは、上記2のような選択はできず、必ず含めることとなります。その点はご注意ください。

 今回のご相談は、相続開始年中に遺産分割が調っているケースですが、未分割の場合の取扱いなど、詳細な内容がお知りになりたい場合には、お気軽に当事務所へご相談ください。

<参考>
国税庁「財産債務調書制度(FAQ)(令和5年4月)」など

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