お知らせ

 今回は相談事例を通じて、配偶者居住権についてご紹介します。

 相続法の改正で、配偶者に関する権利が新設されると聞きました。どのような権利なのでしょうか。

 相続に関する民法の改正作業が進められており、1980年以来、約40年ぶりの改正となる予定です。
 今般の改正で、相続開始時点で被相続人と同居していた建物(以下、居住建物)に配偶者が引き続き居住できる権利が新設されます。これが、ご相談の被相続人の配偶者を保護する視点で設けられた制度であり、「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」の2種類があります。

 「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」の概要をご説明します。

1.配偶者短期居住権

 「配偶者短期居住権」は、遺産分割が終了するまでの期間についての居住権を保護する目的の権利です。相続開始とともに当然に発生し、次のいずれか遅い日までの間、配偶者はそのまま無償で居住建物に住むことができます。

  • ①分割により居住建物の取得者が確定した日
  • ②相続開始から6箇月を経過する日

2.配偶者居住権

 一方「配偶者居住権」は、長期の居住権で、居住建物を終身無償で使用・収益できる権利です。相続開始とともに発生する「配偶者短期居住権」とは異なり、次のいずれかに該当する場合に取得することができます。

  • ①遺産分割において、配偶者が、配偶者居住権を取得したとき。
  • ②配偶者に、配偶者居住権が遺贈されたとき。
  • ③被相続人と配偶者間に、配偶者に、配偶者居住権を取得させる死因贈与契約があるとき。

 配偶者は居住建物の所有者に対し「配偶者居住権」の登記を請求でき、登記することで、第三者に対する権利の主張も可能となります。

 なお、「配偶者短期居住権」「配偶者居住権」は、いずれも譲渡することはできず、配偶者の死亡等により消滅します。配偶者の死亡によりこれらの権利が消滅した場合、原状回復義務等の義務は、配偶者の相続人が相続することになります。

 また、「配偶者短期居住権」は評価の対象とはなりませんが、「配偶者居住権」はその財産的価値に相当する価額を相続したものとして扱われますので、注意が必要です。

※改正法律案は以下の法務省サイトでご確認ください
 「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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