お知らせ

 今回は相談事例を通じて、預金債権の仮分割の仮処分についてご紹介します。

 夫が亡くなったため、相続人である私と夫の兄弟姉妹たちとの間で半年ほど遺産分割協議を続けていましたが、どうしても折り合いがつかないことから、この度、遺産分割調停を申し立てることになりました。
 また、我が家の生活費はすべて夫の預金口座で管理していたのですが、この預金口座は夫が亡くなったことで凍結されてしまいました。そのため、現在は預貯金の仮払い制度を利用して、夫が亡くなった直後に払い戻した150万円を取り崩しながら生活しています。
 ただ、肝心の遺産分割調停については解決の目途が立っておらず、今後調停が半年も1年も続くような場合には、到底生活していくことができません。何とか当面の生活費を確保する方法はないでしょうか。

 本件のようなケースでは、「預金債権の仮分割の仮処分」制度の利用を検討することが考えられます。以下で本制度について、概略を説明します。

1.預金債権の仮分割の仮処分について

 令和元年の相続法改正により「預貯金債権の仮分割の仮処分」に関する制度が新設されました(家事事件手続法第200条3項)。

 本制度は、「預貯金債権は遺産分割の対象となる」と判示した平成28年決定により、預貯金債権が遺産分割までの間は共同相続人全員の共同でなければ行使できなくなったため、例えば被相続人の扶養内にあった相続人において、被相続人にまつわる債務の弁済あるいは生活費の支出の必要があるにもかかわらず、共同相続人の一人でも協議に同意しないために払戻しを受けることができないといった不都合を是正する目的で制定された背景があります(※1)。

 なお、金融機関ごとに法定相続分の3分の1あるいは150万円のいずれか低い方の金額を上限に払戻しを認める預貯金の仮払い制度(民法第909条の2)とは異なり、本制度では家庭裁判所に対して当該仮処分を求める旨の申立を行い、裁判所から仮分割を認める決定を取得する必要があります。

2.要件

①本案が係属していること
 本制度の利用にあたっては、当該預金債権が分割対象となっている遺産分割調停事件もしくは、遺産分割審判事件が家庭裁判所の事件として係属している必要があります。

②権利行使の必要性
 本制度の利用により預貯金を払い戻す必要性が認められる必要があります。典型例としては、生活費の支払いや施設利用料の支払いを行わなければならない場合が挙げられます。

③他の共同相続人の利益を害しないこと
 どの程度であれば、他の共同相続人の利益を害しないかについて明確な基準は決められておりませんが、一つの考え方として、仮分割を求める金額が当該預貯金債権額に自身の法定相続分を乗じた金額を上回らないこと(すなわち、請求額が自身の法定相続分に応じた金額を超えないこと)が挙げられます。

3.手続きおよび想定される効力

 本制度では、仮処分の可否を決定する前に、相手方である他の相続人に意見の陳述の機会が与えられ、裁判所はこの陳述を聴取しなければなりません(家事事件手続法第107条)。

 

 陳述の方法には、相手方が実際に裁判所に出廷して意見を述べる方法と裁判所から送付された書面に意見を回答する方法があり、いずれかの方法を経た後に裁判所が仮処分の可否を判断することになります。

 仮に、仮処分が認められた場合の取得額は、本件のように生活費の確保を目的として本制度を利用した場合には、月々の生活費に本案について見込まれる審理期間(数ヶ月~1年程度)を乗じた金額になるものと思われます(※2)。

(※1)「中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案(追加試案)の補足説明」(平成29年7月18日)
(※2)片岡武・管野眞一「改正相続法と家庭裁判所の実務」(日本加除出版株式会社)93頁-106頁

 

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。

 小学校へ入学した孫に対して、教育資金の一括贈与を2023年中に行おうと思います。教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度は適用できますか?

 孫の小学校入学を機に、教育資金の一括贈与を検討しています。
 一度に渡しても一定額までであれば贈与税が非課税となる、と聞いています。これが今年(2023年)の3月末までと聞いていましたが、令和5年度税制改正で延長はされましたか?

 ご相談の非課税は、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度と考えられますが、こちらについては、令和5年度税制改正で適用期限が3年延長されました。具体的には、2026年(令和8年)3月31日が延長後の適用期限となります。

1.教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度

 年齢30歳未満の一定の受贈者が、教育資金に充てるため、一定の契約に基づき、祖父母など直系尊属から信託受益権を取得するなど教育資金口座の開設等を行った場合には、その信託受益権等の価額のうち1,500万円を限度に、一定の手続をすることで、受贈者の贈与税が非課税となります。これを「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度(以下、非課税制度)」といいます。

 この非課税制度については適用期間が定められており、平成25年(2013年)1月1日から令和5年(2023年)3月31日までとなっていました。

2.令和5年度税制改正

 2022年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」には、この非課税制度について、いくつかの改正項目が記載されています。主な改正項目は以下のとおりです。

  1. (1) 適用期限の延長
     適用期限を3年延長する。
  2. (2) 契約期間中に贈与者が死亡した場合の相続税の取扱いの見直し
     契約期間中に贈与者が死亡した場合で、非課税となる拠出額から教育資金として支出した額を控除した残額(以下、管理残額)があるときの、管理残額に対する相続税の取扱いについて、受贈者が23歳未満である場合等であっても、贈与者の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときには、相続等により取得したものとみなして相続税を計算する。これは、令和5年(2023年)4月1日以後に取得する信託受益権等に係る相続税について、適用する。
  3. (3) 契約終了時の管理残額の贈与税計算の見直し
     契約終了時において管理残額がある場合の贈与税の計算について、一般税率を適用する。これは、令和5年(2023年)4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税について、適用する。

 ご相談の場合、お孫さんへの教育資金の一括贈与については、適用期限が3年間延長されたことにより、2023年中に利用することは可能です。ただし、適用には一定の要件があります。

 なお、学費や教材費、文具費などの教育費に充てるために扶養義務者からされた贈与については、上記の非課税制度を利用せずとも、必要な都度、通常の範囲内で行えば、贈与税はかかりません。ただし、教育費の名目であっても預金をしたり、株式などの購入資金に充てたりした場合などには、贈与税がかかります。ご注意ください。

<参考>
 国税庁HP タックスアンサー「No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」「No.4405 贈与税がかからない場合
 財務省HP「令和5年度税制改正の大綱

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。

 スーパーやコンビニのお酒売り場へ足を向ければ、
 カラフルなデザインで目を引く缶入り酎ハイが花盛りです。
 かつての愛飲者は、安い酒の象徴のような存在であった「焼酎」が、
 こんなに注目を集めるとは思いもよらなかったことでしょう。

 「canチューハイ」で有名なタカラは、
 いわゆる甲類焼酎では老舗的な存在です。
 戦後復興後には「カストリ」「バクダン」と呼ばれる、
 粗悪品の横行によるイメージダウンと、
 同業者の乱立により厳しい経営を強いられていました。
 そんな中、創業者 大宮庫吉氏は長年持ちつづけた夢でもあった、
 ビール事業へ足を踏み入れることを決断します。

 68歳という年齢でありながら、
 自ら欧米へ視察に出向き製造方法を学びます。
 大手3社がしのぎを削るビール業界へ挑むには、
 個性を出さなければ太刀打ちできないと考えました。

 ホップの香りと苦味を強めたドイツビール風の味にし、容器も目を引くよう、
 それまでの規格にはない500mlの中瓶を採用しました。
 57年、こうして第4番目のビール
 「タカラビール」はこの世に登場したのです。

 しかし、大手が築きあげた牙城は、簡単に崩せるものではありません。
 当時の酒販ルートはメーカごとに系列化しており、
 卸から小売まで特約店形式でビールを販売していたのです。
 広告宣伝を大々的に行っても、
 販売ルートに分け入ることが出来ず苦戦を強いられます。

 後にビール業界に参入したサントリーが
 アサヒの特約店ルートを使って販売を広げたのに対して、
 タカラは居酒屋チェーンに販路を求めるも、波に乗ることが出来ず、
 10年後の67年にビール事業から撤退しました。

 「最初は赤字覚悟」
 新しい事業を行うときには、このようなことを口にします。
 工場建設や店舗造作、機械の購入など、
 たくさんの設備投資を行うときには事業が順調に推移するまで、
 数年間は赤字になることが多いのです。

 この「赤字」の捉え方には注意が必要です。
 他から出資してもらっていない、
 いわゆるオーナー経営の場合には、
 税金の申告や銀行からの融資に使う「損益計算」より
 「収支計算」に目を向けなければいけません。

 「損益計算」では、支払ったお金が経費に
 なるかならないかで利益の金額が変わります。
 実際の経営では「利益」の多さより、
 「お金」のあるなしの方が重要になります。
 ましてや、経営が上手く行くかどうかの瀬戸際では、
 後者の方が断然大切です。

 「赤字」はどのように穴埋めするのか、
 手持ちのお金があるならいいのですが、
 借金で賄うのであれば、その分も見越して借入しておかないといけません。
 「収支計算」の「赤字」は、そのままにしておくわけにはいけません、
 だって、マイナスの「お金」は存在しないのですから…

 「庭内神し」の相続税法上の取扱いを教えてください。

 私は代々の地主一族の本家筋の者です。今般、先代が亡くなり私が相続する予定の不動産のうち、自宅の敷地内に先祖代々の祠があり、私たち家族や親族が日常的にお参りしています。相続税の申告に際し、こういった祠や祠がある敷地の扱いはどのようになるのでしょうか。

 今回のご相談の場合、日常的にお参りをしている先祖代々の祠ということですので、祠がある敷地部分も含めて相続税の非課税財産に該当する可能性が高いと思われます。

1.「庭内神し」とは

 一般に、屋敷内にある神の社や祠など、ご神体を祀り日常礼拝の用に供しているものを「庭内神し」といいます。また、ご神体とは不動尊、地蔵尊、道祖神、庚申塔、稲荷などで特定の者または地域住民などの信仰の対象とされているものをいいます。

 

2.相続税法上の取扱い
(1)相続税法の非課税財産の規定

 まずは、相続税法の非課税財産の規定について見てみましょう。同法第12条第1項第2号に以下の規定があります。

相続税法
(相続税の非課税財産)
第十二条 次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
一 (略)
二 墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの
(以下略)

 上記に関連して、相続税法基本通達に以下の規定があります。

相続税法基本通達
(「墓所、霊びょう」の意義)
12-1 法第12条第1項第2号に規定する「墓所、霊びょう」には、墓地、墓石及びおたまやのようなもののほか、これらのものの尊厳の維持に要する土地その他の物件をも含むものとして取り扱うものとする。(平元直資2-207改正)

(祭具等の範囲)
12-2 法第12条第1項第2号に規定する「これらに準ずるもの」とは、庭内神し、神たな、神体、神具、仏壇、位はい、仏像、仏具、古墳等で日常礼拝の用に供しているものをいうのであるが、商品、骨とう品又は投資の対象として所有するものはこれに含まれないものとする。

 条文をそのまま読むと庭内神しやその敷地は、無条件に非課税財産に該当するようにも思われますが、国税庁の質疑応答事例では、一定の要件のもと、非課税財産とする、としています。

(2)質疑応答事例

 国税庁の質疑応答事例「庭内神しの敷地等」では、弁財天を祀るための祠とその附属設備である鳥居があるケースを例示し、祠の敷地や附属設備について“ただちに相続税の非課税財産に該当するとはいえない”とし、一定の要件のもと、非課税財産に該当するとしています。この場合の「一定の要件」とは、以下のとおりです。

  1. ①「庭内神し」の設備とその敷地、附属設備との位置関係やその設備の敷地への定着性その他それらの現況等といった外形
  2. ②その設備及びその附属設備等の建立の経緯・目的
  3. ③現在の礼拝の態様等も踏まえた上でのその設備及び附属設備等の機能

 これら3つの面から、その設備と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地や附属設備である場合

(3)ご相談のケースの場合

 今回のケースに照らすと、ご家族やご親族が日常的に礼拝する先祖代々の祠ということで、上記(2)の要件を満たし、敷地部分も含めて相続税の非課税財産に該当する可能性が高そうです。
 ただし、敷地部分について、庭全体が非課税になるものではなく、祠と社会通念上一体とみなされる部分に限られることに注意が必要です。

 不動産の相続に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

<参考>
 国税庁HP 質疑応答事例「庭内神しの敷地等

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。

 生命保険信託の仕組みとその活用について教えてください。

 私は知的障害がある息子と2人で生活しています。私が死んだ後の経済的な損失は、生命保険に加入することでカバーできると考えていますが、安心して任せられる親族が近くにいないため、受け取った保険金を息子が適切に管理できるかどうか心配です。
 第三者が保険金を管理してくれて、毎月一定額を生活費として息子が受け取ることができるような仕組みがある生命保険はないでしょうか?

 ご相談に沿う生命保険として、「生命保険信託」があります。生命保険信託とは、信託銀行等が受託者となって本来保険金を受け取る人(受益者)のために、保険金の管理や運営を行う仕組みです。

1.生命保険信託とは

 生命保険信託とは、委託者との間で契約を交わした受託者である信託銀行等が、自ら死亡保険金の受取人となり保険金の支払いを受け、その後、指図どおりに財産を受け取る人(受益者)のために管理する仕組みのことをいいます。
 具体的には、以下の図のとおりです。

 委託者は、生命保険会社と生命保険契約を締結します(図①)。その後、信託銀行(受託者)と信託契約を締結し、死亡保険金請求権を信託します(図②)。委託者は生前に誰に保険金を残すか、保険金の支払方法や活用方法を決定します。
 委託者が亡くなると受託者は保険金を受け取り(図③)、あらかじめ委託者が生前に決めた方法に基づいて受益者のために保険金の管理、運営を行います。
 また、あらかじめ指図権者を定めておくと、受託者の急な資金の引き出しや支払条件の変更など指図権者の指示を受けて、保険金の管理、運営を行うことができます(図④)。

 今回のケースでは、相談者様が委託者、ご子息が受益者、財産を管理する信託銀行が受託者となります。

 一般的な生命保険と比較すると、受取人の指定だけでなく、受取方法や使い道まで、細かく指定できる点が生命保険信託の特徴です。

2.生命保険信託の活用事例と注意点

 生命保険信託の活用事例、注意点は以下のとおりです。

【活用事例】
  • 保険金受取人が未成年者や知的障害者で保険金受け取り後の財産管理に不安がある
  • 受取人に計画的にお金を使ってほしい
  • 公益認定法人や学校法人、認定NPO法人などの公益を目的とした団体に保険金として寄付したい  等
【注意点】
  • 取扱いできる保険会社、金融機関が増えてきているものの、対応できる会社や商品が限られている
  • 信託銀行や保険会社に対する費用(※)が発生する
  • (※)一般的には信託契約締結に伴う費用、信託期間中の事務、管理費用が発生します。取り扱う機関により金額は異なりますので、直接ご確認ください。

 今回のご相談のように、保険金受け取り後の管理について不安に思われている場合は、生命保険信託を選択肢の一つとして検討をされるとよいでしょう。相続に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

 

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。

 世の中を風刺したものや、人生の悲哀を語ったものなど、
 各方面で面白い川柳が募集されています。
 某生命保険会社が行っている「サラリーマン川柳」が代表格と言えますが、
 私たちの分野でも、会計川柳や税金川柳というものが募集されています。

 作品は、この業界にいないとわからない専門用語が盛り込まれ、
 少々マニアックともいえますが、クスッと笑えるものであります。
 もう募集はしていないようですが、某靴下メーカーが行っている、
 「足クサ川柳」というものがありました。

 テレビドラマ「陸王」のヒットのお陰で、注目を集めた足袋。
 とはいえ、洋装が一般化した現在では、
 着物や浴衣姿の時にしか身につけないというのが実情です。
 ドラマどおり、生産者は減る一方で、
 そのなかでも国内トップのシェアを保っているのが福助です。

 裃を着た人形がトレードマークの福助は、
 足袋の製造販売では120年以上の歴史を誇り、
 それまで手縫いであった足袋を専用のミシンを開発して、
 機械縫いの分野で成功を収めます。

 一時は広告宣伝にも力を注ぎ、昭和の初期には、
 東京、大阪、福岡に電灯広告塔を建設して世間の人を驚かせました。
 洋装化の流れから戦後は製品の中心を靴下に移行しますが、
 そのほとんどが有名ブランドの名前を付けたライセンス商品で、
 自主ブランドはほとんど無く、販売生産を請け負っている状態だったのです。

 90年代に入ると業績は下降し2003年には遂に、
 経営破たんしてしまったのです。
 再建に名乗りを上げたファンドから送り込まれたのは、
 某百貨店で敏腕を振るった敏腕バイヤーでした。

 改革に手をつけた彼が驚いたのは足袋だけで600円台から1万円まで、
 なんと300種類以上あったのです。
 その結果、在庫は75万足にも達し、資金の負担となっていたのです。

 長年、下請けに近い状態に甘んじていたため、
 ミスを恐れる体質がそうさせていたのです。
 販売先の要望を聞き入れることが、良いことだと思い込んでいたのです。

 彼が持ち出したキャッチフレーズは「進化する老舗、福助」でした、
 いい所は残しつつ、自分達で自立して行こうという思いの現れだったのです。

 その改革のひとつとして、自主ブランドを立ち上げることに手をつけ、
 現在では「フクスケ」の名前を冠したブランドや、
 人気モデルとのコラボレーションによるブランドなど
 数多くのブランドの商品が販売されるに至っています。

 大手企業には当然の如く、「経営方針」がありその中に必ず
 企業理念なるものがあります。
 失礼ながら、お飾りのようなものも数多くあるのですが、
 その言葉の中に、会社の理想とする姿(イメージ)が
 ちゃんと織り込まれていないといけません。
 言葉が先でなく、理想とするイメージが大切なのです。
 「俺の背中を見ながら付いて来い!」だけではダメですよね。

 今回は相談事例を通じて、相続登記義務を履行しない場合の罰則や、できない場合の対応方法などについてご紹介します。

 法改正により、相続登記が義務化されることになりましたが、義務を履行しない場合やできない場合は、どうなるのでしょうか。

 正当な理由なく義務に違反した場合、10万円以下の過料の対象となります(改正不動産登記法第164条第1項)。「正当な理由」とは登記官の判断となりますが、相続登記をするには困難な状況だと認められる必要あります。

 相続登記の義務化に関する法改正は、2021年(令和3年)4月28日に公布され、2024年(令和6年)4月1日より施行されます。
 原則として、相続や遺贈により不動産の所有権を取得した相続人は、その相続人が、「自己のために相続が開始したことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日」から3年以内に相続登記の申請をする義務が生じます(改正不動産登記法第76条の2第1項・第2項、第76条の3第4項)。

 法律施行日(2024年4月1日)より前に相続が開始している(「自己のために相続が開始したことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日」がある)場合も、施行以降は、相続登記の義務の対象となります。この場合、義務の履行期間は、2024年4月1日から3年間となります。

 相続登記の義務履行期間内に、遺産分割協議がまとまらず、具体的にどの相続人がどの不動産を取得すべきか決まらない場合は、相続登記の義務履行期間内に、法定相続分どおりに相続登記を申請し、遺産分割が成立してから3年以内に、遺産分割の内容どおりの相続登記に直す義務を履行するという方法が考えられます。

 その他、新たに創設される「相続人申告登記」を使うという方法もあります。この申告登記は、ひとまず自己が相続人である旨を申告しておく制度であり、相続登記の義務履行期間内にこの申告登記をすることで、義務を履行したことになります。この方法による場合も、遺産分割が成立してから、3年以内に遺産分割の内容どおりの相続登記をする義務があります。

 なお、遺贈により不動産を取得した者が相続人ではない場合には、相続登記義務の対象ではありません。

 

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。

 相続時精算課税制度を適用して贈与をした場合でも、基礎控除が控除できるようになると聞きました。本当でしょうか?

 相続時精算課税制度を適用して贈与をした場合でも、令和5年度税制改正により、基礎控除が控除できるようになると聞きました。これまでは基礎控除がなかったと思いますが、本当でしょうか?

 現行の相続時精算課税制度は、非課税贈与額は累計で2,500万円とし、これを超えた場合に一律で20%の贈与税が課される制度です。基礎控除はありません。これが、令和5年度税制改正において、基礎控除として毎年110万円を控除できる改正が予定されています。

1.相続時精算課税制度とは

 相続時精算課税制度とは、贈与を受けたときの贈与税の計算において、自ら選択することで適用することができる制度です。

 その特徴としては、主に以下のとおりです。

  • 通常の贈与税の計算(暦年課税による計算)とは違い、原則、この制度を選択して贈与を受けた財産の合計額が累積で2,500万円を超えるまで贈与税は課されず、超えた段階から一律20%の税率で贈与税が課されます。暦年課税とは違い、基礎控除はありません。
  • この制度を適用することができるのは、原則、父母又は祖父母から贈与を受けた子又は孫であり、それぞれに年齢制限があります。
  • この制度を選択した場合には、その後の相続時精算課税に係る贈与者(以下、特定贈与者)からの贈与については、相続時精算課税制度を適用して贈与税の計算をしなければなりません。
  • 特定贈与者が亡くなった場合には、相続時精算課税制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の価額)の合計額を相続財産として、相続等により取得した他の財産と合算して相続税を計算した上で、すでに納めた贈与税額がある場合には、相続税額から控除して相続税額を算出します。その際、控除しきれない贈与税額があるときは、相続税の申告をすることで還付を受けることができます。

 なお、特定贈与者と受贈者の年齢制限については、以下のとおりです。

  その年1月1日現在の年齢
特定贈与者 60歳以上
受贈者 18歳以上
(2022年3月31日以前は20歳以上)
2.令和5年度税制改正

 2022年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」には、次の改正が記載されています。

  • 相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとする
  • 特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする

 この改正は、2024年(令和6年)1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されることが予定されています。

 なお、上記の他に、相続時精算課税制度の適用に係る贈与財産について、その贈与の日からその特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に、災害によって一定の被害を受けた場合には、その被害を受けた部分に相当する金額を控除することができる旨も改正として予定されています。こちらは、2024年(令和6年)1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用されることから、すでに贈与されている財産であっても適用対象となる点にご注意ください。

 相続税や贈与税に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

<参考>
 国税庁HP「No.4103 相続時精算課税の選択
 財務省HP「令和5年度税制改正の大綱」PDFなど

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。

 お正月の前後1ヶ月の間、テレビ番組を見ていると、
 日ごろ見たことのない会社のCMを目にすることが無いでしょうか。 
 この時期は、CMの放映料金が安いからかなと思っていましたが、
 理由はそれだけではないようです。

 こちら京都では、地元銀行の 「ながーい、おつきあい。」というCMが、
 長く続いていて、文字通り長く親しまれています。
 また、村田製作所のCMもずいぶん長く放送されています。
 以前には、ロポットと異星人的な女の子が登場する
 ちょっと変わったCMが作られていました。

 どうして村田製作所が正月にCMを多く流すかというと。
 過去に、社員が帰省した際、「○○製作所」という社名から、
 町工場に勤めていると勘違いされ、気まずい思いをしたことが多くあり。
 知名度を上げることを考慮してのことだそうです。

 京都にある電子機器メーカーの村田製作所は、
 セラミックコンデンサーの分野では世界に屈指のシェアを誇る会社です。
 創業者である村田 昭氏が家業の陶磁器類の焼き物製作を引き継いだ時には、
 一般的な陶磁器や絶縁体に使う碍子を作っていました。

 戦時下における政府の統制により、同業者を集めてひとつの会社とする
 企業合同体制を敷かれていたときのことです。
 財閥系のメーカーから、特殊陶器を製作する依頼が入ってきたのですが、
 業界が伸びるチャンスと見る村田氏に対して、
 他の同業者は首を縦に振る気配がありませんでした。

 そこで、手持ちのお金をはたいて工場を借り、
 単独でその注文の製作に取り掛かったのです。
 しかし、陶器を焼くための燃料の調達に手をこまねいている間に、
 メーカーから返ってきたのは「別に工場を作ってしまった」とツレナイ返事でした。
 その代わりに紹介されたのが、セラミックコンデンサーの製作だったのです。

 その時に知り合ったのが、京都大学のある助教授でした。
 終戦後の混乱期の中で、売れるものは何でも作り、
 その日を食いつなぐのが精一杯の時期でした。
 助教授も研究費を捻出するため、
 簡単な電気製品を作るアルバイトのようなことをしていたのです。

 そこで、研究応援する代わりに、セラミックコンデンサーの開発に
 協力してもらう様申し入れをします。
 まもなくして民間ラジオ放送の開始により、
 コンデンサーを多く使うラジオが普及し、
 村田製作所は電子機器メーカーへと礎を築いたのです。

 企業の草創期における出会いは、事業が大きく変化するきっかけとなります。
 出会というのは、人の結びつきもそうですし、手がける商品の場合もあります。
 特に、人との出会いは、お互いの良さを引き出す「触媒」の役割を果たし、
 決して一人では成し得なかった、大きな実りをもたらすことになるのです。

 相続を理由に契約を中途解約し、土地の明渡しを求めることはできますか?

 第三者に貸している土地を相続しました。この土地について、今と違う形での活用や売却を検討しています。相続を理由に契約を中途解約し、土地の明渡しを求めることは可能でしょうか。

 契約の中途解約ができるか否かは、契約の種類等により異なります。まずは契約内容を確認しましょう。

1.中途解約を検討する場合の確認事項

 中途解約を検討する場合、下記を確認する必要があります。

  • ①賃貸借契約の種類
  • ②貸主の死亡によりその地位は相続されるのか否か
  • ③②で相続される場合、契約期間内に貸主から中途解約することはできるのか否か
2.土地の賃貸借契約の種類別中途解約の可否

 土地の賃貸借契約には、主に次の(1)から(3)の3種類があります。それぞれの契約について、上記1.の3項目を中心にご説明します。

(1)建物建築を目的として土地を貸す契約(普通借地契約)
  • ①普通借地契約
  • ②貸主の地位が相続される
  • ③契約期間内の中途解約は不可。契約期間満了時に更新を拒絶することはできるが、その場合は「正当事由」が必要

 上記①のような借地契約における借主の土地に対する権利を、「借地権」といいます。この借地権は「借地借家法」で定められた権利であり、借地借家法は立場の弱い借主保護を目的とした法律です。したがって、借地権は強い権利であり、貸主から中途解約することはできません。

 また、上記③の「正当事由」は、貸主がその土地を利用する正当な理由があるとき、借主の土地利用状況が賃貸借契約時から大きく変わっているとき、並びに貸主が立退料等を支払ったときと定められており、単に「相続したから」は、正当事由として認められません。

 なお、建物建築を目的として土地を貸す契約としては、普通借地契約の他に契約期間満了後、契約更新はなく必ず更地で土地が貸主に返還される「定期借地契約」もありますが、この契約でも貸主からの中途解約は不可であり、相続を理由とした中途解約はできません。

(2)駐車場・資材置き場等での利用を目的として土地を貸す契約
  • ①建物建築を目的としない借地契約
  • ②貸主の地位が相続される
  • ③一定の場合は契約期間内の中途解約は可能だが、解約予告期間は契約内容による

 建物の建築を目的としない借地契約は、借地借家法ではなく民法が適用されます。民法が適用されると、賃貸借の期間の定めがない場合には、いつでも解約の申し入れをすることができます。つまり貸主からの中途解約は可能であり、その条件は当事者間の取り決めで定めることができます。特に相続を理由とする必要はありません。また、期間の定めがあったとしても、契約に期間満了前に当事者の一方の意思表示のみで契約を終了させることができる“中途解約条項”が定められている場合には、中途解約が可能です。

 一般的な解約予告期間としては、駐車場の月極め契約であれば、契約書に1ヶ月から3ヶ月前の予告で中途解約可能と定められている場合が多いですが、期間の定めがない場合は、解約予告をした日から1年後の解約となります。また、契約期間満了時に解約することも可能であり、その際も正当事由は不要です。

(3)無償で土地を貸す契約
  • ①使用貸借契約
  • ②貸主の地位が相続される
  • ③一定の場合は契約期間内の中途解約は可能だが、いつまで契約期間が存続するかは、その土地の利用状況や前後の事情により変わるため判断が難しい

 使用貸借契約は上記(2)と同様、民法が適用されますが、適用する条文は異なります。
 使用貸借契約は期間の定めがないケースが多く、このような場合には、契約の目的を定めていれば、その使用及び収益をするために必要な期間が経過したときに、定めていなければいつでも解約をすることができます。つまり、使用貸借契約の目的によって中途解約ができる時期が大きく変わります。

 例えば自宅の建替えのために、一時的に駐車場として無償で土地を貸した場合、建替えが完了すれば目的を果たしたことになり、その時点で解約可能となります。しかしながら、土地の上に建物が存している場合、「使用及び収益をするために必要な期間が経過したとき」の判断が非常に難しく、過去の判例を見ても判断が分かれています。

 今回のご相談の場合、上記(2)の契約であれば比較的容易に解約することができます。他方、上記(1)の契約は中途解約できず、契約期間満了時の更新を拒絶する場合にも正当事由が必要とされるため、明渡しを求めることは容易ではありません。また、上記(3)の契約は土地の利用状況等により変わります。

 このように、中途解約ができるか否かは契約の種類や内容により異なりますので、まずは契約内容を確認されることをお勧めします。ご不明な点等がございましたら、お気軽に当事務所へお問い合わせください。

<参考>
 借地借家法4条、5条、6条、民法597条、598条、617条、618条

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。
ページトップに戻る