お知らせ

 今回は相談事例を通じて、休眠預金等活用法の概要についてご紹介します。

 休眠預金等を使用するという法律ができたと聞きました。記帳だけは定期的にしており、しばらく入出金等はしていない預金があるのですが、それも休眠預金として活用されるのでしょうか。活用されてしまったら、預金を引き出そうと思っても引き出せないのでしょうか。制度について教えてください。

 民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律(平成28年法律第101号)が成立し、2016年12月9日に公布、2018年1月1日に法律が施行されました。2009年1月1日以降に最後の入出金等の取引があった預金等が原則対象となります。

 「休眠預金等」とは、10年以上、「入出金等の取引」がない預金等のことを言います。休眠預金等になると、預金保険機構に移管され、民間公益活動に活用されます。(金融機関は、預金等の存在を預金者等に通知し、預金者等の所在が確認できない預金等については、HPで公告を行ったうえで、預金保険機構に移管します。)

「預金等」とは

 休眠預金等になりうる「預金等」は、預金保険法、貯金保険法の規定により預金保険、貯金保険の対象となる預貯金です。具体的には、普通預金、定期預金、貯金、定期積金等があります。
 一方で、財形住宅や財形年金などの特定の目的のための預貯金や、障がい者のためのマル優の適用となる預貯金、外貨預金等、預金保険制度の対象とならない預金は、「休眠預金等」の対象ではありません。  

「入出金等の取引」とは

 「入出金等の取引」とは、引き続き預貯金などを利用する意思表示をしたものとして認められるような取引などを言います。どの金融機関でも共通の取引事由と、各金融機関が行政庁から認可を受けて取引事由と認められるものがありますが、通帳の記帳についてはどの金融機関でも共通の取引事由として認められたものではありません。お預けの金融機関が取引事由として認可を受けている場合は、休眠預金として移管されることはありません。  

 また、休眠預金等として移管された後でも、取引のあった金融機関で引き出すことは可能です。引き出す期限についてもありませんので、いつでも引き出すことが可能です。休眠預金となっている期間の利子についても、元の預貯金契約どおりの利子相当額が支払われます。  

 ご自身の預金等が休眠預金等になっているか、制度の詳細については直接お取引先の金融機関にお問い合わせされると良いでしょう。またご自身の預金の管理をするうえでも、使用していない口座はご自身で閉鎖するなど、いま一度見直すこともお勧めします。

参考:金融庁「2018年1月より休眠預金等活用法が施行されます

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 行き過ぎた相続対策による租税回避を防ぐため、小規模宅地等の特例の適用が厳格化されました。貸付事業用宅地等については、対象が3年を超えて貸付に供されている宅地等に限られることになりました。

 平成30年度の税制改正で、小規模宅地等の特例の一部が改正されると聞きました。

 そのなかで、不動産貸付として利用していた宅地等を相続により取得した場合に減額できる「貸付事業用宅地等」について対象が制限されたそうですが、具体的にはどのような改正でしょうか?

 原則として、相続開始前3年以内に貸付を開始した貸付事業用の宅地等が「貸付事業用宅地等」から除外されることとなりました。

[1]貸付事業用宅地等とは

 亡くなった方(被相続人)が生前所有していた宅地等を相続又は遺贈(以下、相続)により取得したときに、相続税の計算上、その宅地等の評価額を減額できる制度(小規模宅地等の特例)があります。このなかには、被相続人若しくは被相続人の同一生計の親族の賃貸事業(不動産賃貸業、駐車場業、自転車駐車場業等)に供されていた宅地等で、次の要件すべてに該当する場合(これを「貸付事業用宅地等」といいます)に、200㎡を上限として土地の評価額を50%減額することができる特例があります。

[2]改正により相続開始直前の相続税対策は難しく

 この貸付事業用宅地等は要件のハードルが低いこともあり、相続税の負担を軽減するために、いったん現金を賃貸不動産に換え、貸付事業用宅地等としての要件を具備した上で特例の適用を受け、その後数年以内に売却する、というケースが多々見受けられました。

 もともと小規模宅地等の特例は、相続開始後の相続人等の生活保障という側面があるため、このような相続税対策は趣旨にあわず、これを封じるために今回の改正が行われています。

 具体的な改正は、次の通りです。

 基本的には、上記《改正後》(1)のように3年縛りが加わりましたが、(2)のように3年を超えて事業的規模の貸付事業を行っている方に係る貸付事業用宅地等はこの改正の適用から除外されること、さらに(3)のような経過措置があります。

 これまでの要件に加え、どのような方がいつから貸付をしているのかの確認をする必要がありますので、ご注意ください。

<参考条文等>
 措法第69の4、措令第40条の2、措規第23の2、措通第69の4の4、措通第69の4の13

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 実家など相続人が分割して取得することが難しい財産がある場合には、代償分割という方法があります。

 先日、同居していた母が亡くなり相続が発生しました。相続人は兄と私の二人です。遺産分割の件で、兄とは、遺産について均等に相続することで話を進めていますが、実家(不動産)の分け方について話がまとまりません。私は、住み慣れた実家で生活を続けたいのですが、兄は、実家を共有せず、売却して金銭にかえることを主張しています。兄を納得させ、私が実家を相続する方法はないのでしょうか。

 今回のケースは、代償分割により解決できるのではないかと思います。代償分割とは、不動産などの物理的に分けられない遺産に対して、複数の相続人がいる場合、その遺産を相続した者が他の相続人に差額の代償金を支払うことをいいます。

 遺産分割には、代償分割の他にも、遺産を現物のまま分割する方法(現物分割)、遺産を売却して、売却代金を分割する方法(換価分割)などがあります。

 代償分割を行うときに問題となるのは、相続財産の中から代償金を支払うことができないなど、代償金が用意できないことです。代償金を用意するのが難しい場合は、他の相続人の承諾を得たうえで、代償金を分割して支払うこと、相続する不動産を担保として融資を受けて代償金を準備し、金融機関に返済する方法、リースバックなどが考えられます。

 リースバックは、遺産である不動産(実家)を第三者に売却した後、売却代金を受け取り、売却した相手方と賃貸借契約を締結し、そのまま不動産を利用する方法です。ただし、リースバックには、時価よりも低い金額でしか売却できないこと、売却時に費用がかかることなど、デメリットもありますので、利用する場合は、制度をよく理解することが必要です。

 なお、代償分割を行う場合に、遺産分割協議書の中で代償分割により他の相続人に代償として金銭を支払うことを記載しなければ、代償金の支払いが単なる贈与であるとみなされ、贈与税が課税されることがありますので注意が必要です。また、税務上は、次の点にご留意ください。

    • ✓代償財産の価額は、代償分割の対象となった財産を現物で取得した人が他の相続人などに対して負担した債務の額の相続開始時の金額となります。よって、代償債務額を「代償分割時の時価」を基準に決定した場合には、相続税の課税価格の計算において調整が行われます。

 

    • ✓代償財産は現金である必要はありませんが、現金以外の場合には譲渡所得として所得税や住民税などの負担が生じる場合があります。

 

  • ✓代償財産が不動産である場合には、代償を受ける側に不動産取得税と登録免許税がかかり、代償分割による移転登記は登録免許税の税率が20/1000と、相続による場合(4/1000)に比べると負担増になります。

 <参考>
   国税庁タックスアンサー No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算

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 被相続人が加入していた死亡保険金は受取人固有の財産であるため、相続放棄をした人も受け取ることができます。但し、相続財産として相続税の課税対象となります。

 先日、父が亡くなりました。父が加入していた生命保険があり、受取人は母と私(長男)となっていました。母は、 父の相続にあたり、相続放棄し父の財産をもらわない予定です。ただ、父の葬儀費用や母の今後の生活費に充てるため、生命保険だけは母も受け取りたいと考えています。母が保険金を受け取ることは可能でしょうか?

【契約内容】

契約者、被保険者=父、 
死亡保険金受取人=母、長男(受取割合 それぞれ1/2)  
保険種類=終身保険、 保険金額=1,000万円

 今回のケースでは、お母様は相続放棄をしても、死亡保険金500万円を受け取ることができます。注意点は、詳細解説でご確認ください。

 相続放棄とは、被相続人が亡くなった後に家庭裁判所に申し立てることにより、最初から相続人でなかったこととする方法です(民法939条)。相続の放棄をすると、預金や不動産といったプラスの財産を一切引き継ぐことができなくなると同時に、借金や保証人の地位といったマイナスの財産も引き継がなくてよくなります。

 では、なぜ相続放棄をした場合でも、死亡保険金を受け取れるのでしょうか?

 契約者と被保険者が同じ人の場合、死亡保険金は死亡した人の財産ではなく、保険金受取人の固有の財産となります。そのため、たとえ相続を放棄したとしても、死亡保険金を受け取ることができるのです。今回のケースでは、お母様は相続放棄をしても、死亡保険金500万円を受け取ることができます。

 但し、以下のような注意点があります。

    • ①死亡保険金は、税法上「みなし相続財産」として、相続税の課税対象となります。

 

  • ②相続を放棄した人は、生命保険金の非課税金額(※)の適用を受けることはできません。

※生命保険金の非課税金額とは
 相続税の計算において、生命保険は、「500万円×法定相続人の数」の額が非課税となります。 但し、相続人が保険金を受け取った場合に限ります。

 今回のケースの場合

  • ・お母様は、死亡保険金500万円を受け取ることはできますが、生命保険の非課税の適用はありません(但し、配偶者の税額軽減の規定は適用されます)。
  • ・ご長男様は、死亡保険金500万円を受け取り、かつ、生命保険金の非課税金額の適用を受けられます。

 生命保険金の非課税金額の計算をする際の法定相続人の数には、相続放棄した人も含めます。よって、500万円×2人(法定相続人:母・長男)=1,000万円が非課税金額となり、ご長男様は受け取った死亡保険金500万円全額が非課税となります。

<参考条文>
 相基通19の2-3

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 今回は相談事例を通じて、遺産分割協議が不成立の場合の対応方法についてご紹介します。

 父親が亡くなり、兄弟で遺産の分け方を決めようとしていたのですが、皆、感情的になるばかりで自分たちではどうにも話がまとまりません。どうすればよいのでしょうか。

 相続人間で遺産分割の協議が整わない場合には、家庭裁判所に分割を決めてもらうよう請求することができます。

 家庭裁判所での遺産分割手続きには、「遺産分割調停」と「遺産分割審判」の2種類があります。  

 遺産分割調停が話し合いによる相続人間の自主的な解決を目的とするものであるのに対し、遺産分割審判は、裁判により強制的に分け方を決めるものになります。  
 遺産分割を家庭裁判所に求める場合、その旨を申し立てる必要があります。どちらを申し立てるのかは自由とされていますが、審判を求めた場合でも裁判所の判断で調停を行うことができ、まずは調停をするというのが一般的です。また、裁判所の手続といっても遺産について調べてもらえる訳ではないので、どのような遺産があるのか等の資料は各共同相続人が用意します。  

 調停の手続は、調停委員と裁判官が相続人の話を聞き、対立する相続人に伝えるという形で話し合いを行っていきます。調停の中で話し合いがまとまれば、調停調書が作成されます。1回で終わるものもあれば、何回も回数を重ねて行われることもあり、調停がまとまらない場合には、遺産分割審判の手続に移り、裁判で決着をすることとなります。  

 調停調書にも確定した審判にも、確定判決と同じ「決まった内容を強制的に実現する」効力があります。そのため遺産分割調停でも遺産分割審判でも、自分の考える通りの結果になるとは限りませんが、自分の主張はしっかりとしていかなければなりません。  

 裁判所での手続と聞くと大変なことのように思えますが、遺産分割調停では調停委員の方や裁判官が相続人の間に入ってくれますので、直接話し合いをする必要がなくなり、ご質問者様の状況のように、皆様が感情的な状態よりは冷静に話し合いを進められると思われます。遺産分割協議が整わないなと感じたら、裁判所に関与してもらうことも解決法の一つです。

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 被相続人から相続開始前3年以内に受けた贈与財産は、贈与税の申告をして納税をしていた場合でも、相続税額の計算上、相続財産に加算することになります。

 父が平成28年12月25日に亡くなりました。父は資産が多く、将来の相続税を心配し、以下のとおり毎年贈与をしていました(注:暦年課税で申告)。相続が発生したときには父の財産は基礎控除額の範囲内(4100万円)でしたので、相続税の申告はしなくても大丈夫でしょうか。なお法定相続人は姉(私)と妹の2人です。

 結論から言うと、相続税の申告は必要となります。
 相続開始前3年以内に受けた贈与財産は、相続発生時に相続財産として相続税が課税されるからです。
  これは、亡くなる直前に生前贈与をすることにより、相続税が不当に軽減されることを防止するためです。

  次のケースで考えてみましょう。

 平成25年10月1日に生前贈与を受けた財産は、相続開始前3年超の財産ですので、相続財産に加算はされません。
 また、平成28年に生前贈与を受けた財産は、相続開始年分の贈与となり、贈与税は課税されません。  
 贈与税も支払い、相続対策として行ってきた生前贈与ですが、相続発生日(亡くなった日)から過去3年以内に贈与された財産は、相続財産に加算され、相続税の課税対象となってしまいます。
 今回のケースの、お父様の相続税の計算は以下のとおりとなります。

※贈与税控除額 
 被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受け、相続税の課税価格に加算されたものがある場合には、その加算された贈与財産に対して課税された贈与税額は、算出相続税額から控除します。

  • ①平成25年分 170,000×1,300,000/(1,500,000+1,300,000)=78,928円
  • ②平成26年分 90,000円
  • ③平成27年分 40,000円      合計:208,928円

 なお、今回のケースには当てはまりませんが、納付した贈与税額が相続税額よりも多い場合であっても、超過する部分の贈与税の返還を受けることはできません。また、加算税、延滞税、利子税の額も控除する贈与税額には含まれません。

 ただし、相続開始3年以内であっても、以下に掲げる財産は加算されません。

《加算されない贈与財産の範囲》(国税庁HPより)

 被相続人から生前に贈与された財産であっても、次の財産については加算する必要はありません。

  • (1)贈与税の配偶者控除の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
  • (2)直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • (3)直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • (4)直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額

(注)暦年課税
 贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。今回は「暦年課税」により課税された生前贈与財産の加算について説明しています。 「暦年課税」は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額(110万円)を差し引いた残りの額に対して税金を課するものです。1年間にもらった財産の合計額が110万円までの場合、贈与税はかかりません(申告不要)が、相続税の生前贈与加算の対象となります。

<まとめ>

  • ・相続などにより財産を取得した人が、その相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産には相続税が課税されます
  • ・贈与税の基礎控除内(110万円)でも、相続開始前3年以内に贈与を受けていれば相続財産に加算され、相続税の課税対象となります
  • ・贈与税の配偶者控除を受けている場合等、加算されない贈与財産もあります

<参考条文>
〈相法19 21の2~6 相令4 借法70の2 70の2の2~5 相基通19-1 19-2〉

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所在地 〒604-8471 京都市中京区西ノ京中御門東町101
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 ソシアルビルへの投資は市況の変化に適切に対応することが必要であるため、高い資金力や人脈、ノウハウが必要であり、初心者に勧められる投資とはいえないでしょう。

 相続対策として不動産投資を考えています。ある人から、「一般的な居住用のマンションやアパートへの投資は、不動産価格の上昇により利回りが低くなっていることから投資として旨みがない。ソシアルビルへの投資であれば、現在のような経済情勢の下でも比較的高い利回りを確保できる」としてソシアルビルへの投資を勧められています。ソシアルビルへの不動産投資に当たって注意すべき点を教えてください。

 ソシアルビルへの不動産投資は、ハイリスクハイリターンの投資であるといえます。初めて不動産投資をするような方が投資対象とするのは、あまりお勧めいたしません。

 ソシアルビル(別名:ソーシャルビル)とは、飲食店や居酒屋など複数の店舗テナントが入居するビル、いわゆる雑居ビルをいいます。特にスナックやバー、クラブなど水商売や風俗系などのテナントが入居する歓楽街にあるようなビルを指すことが多いようです。

 不動産投資に当たって、相続対策ということで、全額自己資金で不動産を購入できるだけの資金力があれば問題ないのですが、金融機関からの借り入れを併用して資金調達を行う場合、ソシアルビルについては、一般的な居住用のマンションやアパートと比べて融資を受けることが難しいケースが多いようです。特に風俗系のテナントが入居しているような物件については、融資に応じてくれる金融機関は一部ノンバンクなどを除きほとんどないと思われます。

 ソシアルビルは、権利関係が複雑なケースが多く、又貸しも当たり前のように行われていますし、賃料の滞納も居住用の不動産などに比べると多く発生します。したがって、投資される方自身で相当の時間を割いてビルの運営に当たるか、ソシアルビルの運営に長けた管理会社に管理を委託するなどしないと、早々に運営に行き詰まることになってしまうかもしれません。また、運営コストについても、ソシアルビルの場合、水道光熱費はオーナー負担であることが多く、エアコンなどの稼働時間も長くなりがちであることから、高額となることが多いようです。さらに、ソシアルビルの特性として、他の用途の不動産と比較して景気変動の影響を受けやすいという点も指摘されます。

 また、ビルの設備に不備があったことにより他人に損害を与えた場合には、所有者の責任が問われることがあります。2001年に44人もの死者を出した東京・新宿歌舞伎町のビル火災では、火災報知機や避難器具が実際には使用できない状態であったことから、ビルオーナーの責任が問われ、執行猶予付きの有罪判決を受けるとともに、民事上8億円以上の損害賠償金を支払うことになったとのことです。

 以上をまとめると、ソシアルビルへの不動産投資を行うためには、高い資金力が必要になるとともに、運営も独特の人脈やノウハウが必要となることから、初めて不動産投資をするような方が投資対象とするには相応しくないように思われます。一方、多額の資金を持ち、運営のノウハウがある方にとってソシアルビルは、他の用途と比べると相対的に高い利回りが確保できることから、まさにハイリスクハイリターンの投資であるといえるのではないでしょうか。

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 死亡保険金は相続税法上のみなし相続財産ですが、受取人固有の財産であり、分割対象の相続財産ではないことから、分割財産を超える額の代償金の交付は贈与となります。

 父が亡くなりました。遺産は、父名義の不動産(1億円)、相続人である次男が保険金受取人となっている生命保険(1億2000万円)、その他の財産8000万円です。
 相続人は長男(=今回の相談者)、次男、三男の三人です。
 相続人三人で分割協議をしたところ、次のようにまとまりそうです。

    •  ①長男:父名義の不動産1億円

 

    •  ②次男:死亡保険金1億2000万円、ここから三男に代償金2000万円を支払う

 

  •  ③三男:その他の財産8000万円、次男からの代償金2000万円

以上のように遺産分割した場合、課税関係はどうなるのでしょうか?

 上記遺産分割の場合、次男から三男への2000万円の代償金は贈与税の課税対象となります。

 ここで注意したいのは、死亡保険金は「遺産」ではなく、保険金受取人の「固有の財産」だということです。
 今回の遺産分割案で次男は生命保険のみを受取ることになり、父親の遺産を相続で取得していません。
 この場合、次男から三男への2000万円は代償分割ではなく、贈与に該当します。
 仮に、次男が父親から何らかの遺産を取得していれば、その取得した遺産相当額は贈与には該当しません。例えば500万円の遺産を取得していた場合、贈与税の対象となる金額は、
  2000万円(次男の固有財産)-500万円(遺産)=1500万円
となります。

<参考判例/抜粋>

~取得した保険金は相続財産か受取人固有の財産か~ (昭和48年6月29日・最高裁)

  •  保険金受取人を相続人と指定した契約は、特段の事情がない限り、被保険者死亡のときにおけるその相続人たるべきもののための契約であり、その保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に相続人たるべき者の固有財産となり、被保険者の遺族から離脱したものと解すべきであることは、当裁判所の判例(昭和40年2月2日・最高裁判決)とするところであるから、本件保険契約についても、保険金請求権は、被相続人の固有財産に属するものといわなければならない。なお、本件保険契約が団体保険として締結されたものであっても、その法理に変わりはない。

~受取人固有の財産を、相続した積極財産の額を超えて代償金として交付した場合、その差額は贈与となるか~ (平成11年2月25日・東京地裁)

  •  代償債務のうち、・・・積極財産(※1)の額を超える部分は、現物をもってする分割に代える代償債務には該当せず、・・・新たに経済的利益を無償にて移転する趣旨でされたものというべきであり、・・・積極財産を超える部分については、・・・相続税の課税価格の算定に当たって、消極財産(※2)として控除すべきものではなく、・・・取得した代償債権の額は・・・贈与により取得したものというべき。

(※1)積極財産(権利)の例
 不動産、動産、貴金属類、現金、預貯金など、地上権、賃借権 などの権利
(※2)消極財産(義務)の例
 借金、連帯保証人債務、買掛金、ローン債務など

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 今回は相談事例を通じて、相続人不存在の場合の特別縁故者への財産分与についてご紹介します。

 私の実母は、私が3歳のときに亡くなりました。その後、私が7歳になる頃に父は再婚し、私は父とその再婚相手の方と一緒に暮らしていました。私は父の再婚相手の方を実の母のように思い、また、父の再婚相手の方も私を実の子のように思ってくれており、学校行事などにも母として参加してくれていました。
 5年ほど前、父が亡くなり、生活に困ることが無いよう、父の財産はすべて父の再婚相手の方が引き継ぐよう遺産分割協議を行いました。
 先般その父の再婚相手の方が亡くなったため、法律に詳しい友人に相談したところ、私と父の再婚相手の方で養子縁組をしていないので、私の相続権はないと言われてしまいました。友人の言うところでは、父の再婚相手の方に実子はなく、父母も死亡しており、兄弟姉妹はいないため、相続人不存在となり、相続財産は国庫に帰属してしまうとのことです。
 私と父の再婚相手の方は、7歳の頃から実の母子同然に暮らしてきました。養子縁組をし忘れただけで、父の相続財産を含めた相続財産が国庫に帰属することは納得がいきませんが、仕方がないのでしょうか。

 正確には、相続関係を証明する戸籍等を確認しなければなりませんが、お話を伺ったところ、お父様の再婚相手の方に相続人がいないことは間違いありません。また、最終的に相続人不存在で、残余の相続財産がある場合には、その残余の相続財産は国庫に帰属するよう法律で定められています。

 ただし、相続財産が国庫に帰属するまでには下記のように一定の手続きがあり、その手続きの中で、家庭裁判所が、相当と認める場合は「被相続人と生計を同じくしていた者」「被相続人の療養看護に努めた者」「その他被相続人と特別の縁故があった者」(これらの者を「特別縁故者」といいます。)の請求によって、特別縁故者に対して、清算(相続債務の弁済など、下記1~4の手続き)後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる(下記5)との、特別縁故者への財産分与の手続きが定められています。
 あなたは、お父様の再婚相手の方と幼い頃から母子同然に暮らしてきたとのことですので、この特別縁故者に該当する可能性があります。

 なお、この特別縁故者への財産分与は、家庭裁判所が職権で審判するため、必ず相続財産が分与されるとは限りませんが、一度、専門家へご相談することをおすすめします。

【相続人不存在による手続きの流れ】

    • 1.相続財産管理人の選任
       相続債権者などの利害関係人または検察官の請求によって、家庭裁判所は管理人を選任する(民法952条1項)。

 

    • 2.管理人の公告
       家庭裁判所は管理人を選任した旨を掲示や官報で公告する(民法952条2項)。

 

    • 3.相続債権者・受遺者への公告
       上記2の公告期間(2ヶ月)経過後、管理人は、いっさいの相続債権者・受遺者に対し請求の申出をするよう公告し、知れたる債権者・受遺者へは各別に債権を申し出るよう通知する(民法957条)。

 

    • 4.相続人捜索への公告
       上記3の公告期間(2ヶ月以上)経過後、家庭裁判所は、管理人・検察官の請求により、相続人捜索の公告をする(民法958条)。

 

    • 5.特別縁故者への財産分与
       上記4の公告期間(6ヶ月以上)経過後、3ヶ月以内に特別縁故者からの請求があれば、相続債権者への清算後、残余すべき相続財産の全部または一部を特別縁故者へ分与できる(民法958条の3)。

 

  • 6.5によって処分されなかった相続財産は国庫に帰属する(民法959条)。
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 個人事業主の事業を引き継いだ場合でも、個人事業主の税務上の身分は引き継がれませんので、改めて種々の届出等の手続きが必要になります。

 先日、私と一緒に飲食店をやっていた父が亡くなりました。父が亡くなるまでは、事業主は父で、私は給料をもらっていました。今後は、私が事業主となり飲食店を続けていこうと思っていますが、事業主の変更にあたり税務署へはどのような手続きが必要になりますか?

 事業主の変更にあたっては、前事業主は「個人事業の廃業届」を、新事業主は「個人事業の開業届」を提出することとなります。また、各種届出等(青色申告など)の効力は、お父様からあなたへ自動的には引き継がれませんので、これらの制度を利用したい場合には、それぞれ改めて届出書等を提出する必要があります。
 これらの制度の適用を受けるためには、提出期限までに届出書等を提出する必要がありますが、相続によって事業を引き継ぐ場合には、これら書類の提出期限が通常の場合と異なりますので、注意が必要です。

 以下に、事業を引き継いだ際に提出が必要となる主な書類とそれぞれの提出期限をまとめました。

【所得税青色申告承認申請書】
 相続人が、所得税の申告を青色申告で行いたい場合には、青色申告承認申請書の提出が必要です。

【消費税の課税事業者選択届出書】
 相続人に消費税の納税義務がない場合であっても、事業継承後消費税の課税事業者となりたいときには、消費税の課税事業者選択届出書の提出が必要です。

【消費税簡易課税制度選択届出書】
 事業承継後消費税の課税事業者となる相続人が、簡易課税制度により消費税を計算したい場合には、「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要です。

<まとめ>

  • ・被相続人が税務署へ提出している各種届出等の効力は、相続により相続人へは引き継がれませんので、相続人にて改めて手続きが必要です。上記の他、給与支払いがある場合には、源泉所得税の納期の特例、青色専従者給与に関する届出書などがあります。
  • ・相続による事業承継の場合には、各種届出等の提出期限について特例が設けられています。
  • ・12月に入ってから相続が発生した場合などは、税務署長へ申請することにより、提出期限を延長することが可能です。

 事業承継にあたり適正に手続きをするためには、相続の発生日、被相続人の届出状況、相続人の事業の状況等について入念に状況把握を行うことが大切です。

<参考条文> 
 所得税法第125条、144条、166条、消費税法第9条第4項、第37条第1項、消費税法施行規則第11条第1項、第17条第1項、消費税基本通達1-4-16、1-4-17、13-1-5の2

 

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