お知らせ

 引き継いだ家の相続登記をしていません。相続登記には相続税の申告のような期限がありますか?

 3年前に母が亡くなったとき兄弟で話し合い、当時母と同居していた私が母名義の家を引き継ぎ、そのまま現在に至ります。ただし、相続登記はしていません。相続登記には相続税の申告のような期限がありますか?

 相続登記を行うのに法令上の期限はありませんが、相続登記を行って権利を公に確定させると、その後の不動産の処分等の手続きはスムーズです。早めに相続登記を完了させることで、結果的に手続きが簡易になり、費用も抑えられます。

 法令上、相続税の申告は被相続人が亡くなってから10ヶ月以内に行う必要がありますが、相続登記に期限はありません。そのため、そのまま放置していても法令上の罰則などはありません。ただし相続登記を済ませておかないと、法的な地位がなく公に権利を証明できないため、仮に当時合意していたとしても、将来的に他の相続人等ともめる可能性があります。また、相続した不動産を売却したいときや、相続した不動産を担保に銀行等から融資を受ける場合などの際の手続きが進みません。

 その他、相続人が複数いる場合に不動産の相続登記をするには、遺産分割協議書が必要です。遺産分割協議書とは、相続人の間で遺産分割の協議をし、その内容を記した書類(実印押印、印鑑証明書添付)です。遺産分割協議書が作成されていなければ、不動産の相続登記ができないばかりか、口頭で遺産分割に同意した他の相続人が亡くなった場合、単独で不動産を取得するためには、さらにその相続人の協力が必要になります。

 例えば、長男と三男の同意の上、次男が親の家を引き継いだ場合です。この場合、兄弟で遺産分割協議書を作成しない間に、長男に相続が発生すると、次男が親の家を単独で所有するためのハードルが上がります。なぜなら次男は、兄の相続人及び弟と親の家を自分が引き継ぐ内容の遺産分割協議書を作成しなければ、その家を単独で相続することができなくなるからです。兄弟の子世代(2世)であれば、交流は図りやすく意思疎通がしやすいため、遺産分割協議がまとまる可能性は高いと思われますが、兄弟の子世代(2世)に相続が発生すると、孫世代(3世)の同意が必要になってきます。孫世代までとなると交流が図りづらく権利関係が複雑化し、遺産分割協議は一筋縄ではいかない可能性が高まります。

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 会社が契約していた生命保険を遺族が受け取ったとき、相続税はかかりますか。

 先月、夫が亡くなりました。その数週間後に夫が勤務していた会社から、会社で契約していた生命保険があるので請求手続きをお願いしたい、と連絡がありました。以下の契約内容による死亡保険金を配偶者である私が受け取った場合、相続税はかかりますか?

 <契約内容>
  ・保険種類:養老保険
  ・契約者、保険料負担者:会社 
  ・被保険者:夫
  ・死亡保険金受取人:被保険者の配偶者

 ご主人様が勤めていた会社が、この生命保険契約による死亡保険金を「退職手当金等として支給する」と定めている場合と、そうでない場合とで税の取扱いが異なります。

1.「退職手当金等として支給する」と定めている場合
 退職手当金等に該当し、みなし相続財産として相続税の対象になります。
 この保険金を相続人が受け取った場合には、退職手当金等に係る非課税措置(限度額=500万円×法定相続人の数)を適用することができます。この場合の相続人とは、相続を放棄した人や相続権を失った人は除かれます。ご相談者様がこれら相続人から除かれる人に該当しなければ、相続人として非課税措置を適用することができます。
            
2.上記以外の場合
 会社が契約して保険料を負担していても、被保険者の相続人その他の者が死亡保険金を受け取った場合、会社が負担した保険料は、被保険者である夫が負担していたものとして取扱われます。
 よって、夫が個人で契約していた生命保険と同じように 死亡保険金はみなし相続財産として、相続税の対象になります。
 この死亡保険金を相続人が受け取った場合は、上記の退職手当金等とは別の非課税措置として、死亡保険金の非課税措置(限度額=500万円×法定相続人の数)を適用することができます。
 この場合の相続人も上記1.と同様に、相続を放棄した人や相続権を失った人は除かれます。ご相談者様がこれら相続人から除かれる人に該当しなければ、相続人として非課税措置を適用することができます。

 なお、いずれの場合も実際に相続税が発生するか否かは、ご主人様の他の相続財産等を含めた総額で判断することになります。

 

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 今回は相談事例を通じて、戸籍が古くて発行されない場合の対応についてご紹介します。

 

 夫が亡くなりましたが、私達夫婦には子供がおらず、両親ともすでに亡くなっています。亡夫名義の土地の名義を変更しようとしたところ、亡夫の兄弟も相続人になるので、兄弟の戸籍等も必要になるといわれました。

 そこで市役所で戸籍を取得しようとしたところ、古い戸籍は発行されないとのことでした。戸籍が発行されない場合は、どうしたらよいでしょうか。

 被相続人に子がおらず、両親(祖父母も)死亡している場合は、兄弟姉妹が相続人になります(民法第889条)。

 この場合、相続人である兄弟姉妹を特定するために、不動産登記手続き等では、被相続人(亡夫)の出生から死亡までの戸籍・除籍謄本のほか、被相続人の両親についても出生から死亡までの戸籍・除籍謄本が必要となります。被相続人の兄弟姉妹ということは、被相続人の父母の子供を全て確認する必要があるからです。よって、場合によっては明治時代の戸籍などまで遡って取得する場合も多くあります。

 高齢の方の兄弟姉妹相続の場合に多いのですが、そのご両親の戸籍謄本について古い戸籍が取得できないことがあります。保存期間の満了や、戦争・火災等による滅失等で役所に保存されていない場合です。

 不動産登記(相続による所有権移転登記等)の場合、従来、そのような場合には、取得できる戸籍・除籍謄本のほかに、滅失等により除籍等の謄本を交付することができない旨の市町村長の証明書及び「他に相続人はいない」旨の相続人全員による証明書(印鑑証明書付)が必要でした。相続人全員による証明書とは、古い戸籍が取得できないために、被相続人の両親の子供(被相続人の兄弟)が他にいないことを証明することができず、その代替として、判明している相続人全員で、「他に相続人はいない」ことを法務局に対して申し述べるもので、不動産登記に特有の書類です。

 しかし、今般、相続人全員による証明書(印鑑証明書付)は不要となり、「滅失等による除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書があれば、相続登記は手続ができることとなりました(平成28年3月11日法務省民二第219号 通達)。これによって、疎遠の相続人に証明書にサイン押印もらうことや、遺産分割協議がまとまった後、さらに証明書にサイン押印をもらう手間や相続人のストレスが減り、よりスムーズに手続きができることとなります。

 

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 継続的な収入により金融資産が減らないとき、相続対策として良い方法はないでしょうか。

 不動産賃貸業を営んでいる父は、賃貸マンションや金融資産をそれなりに保有しています。そのため相続対策として、毎年子や孫へ現金贈与を行っていますが、不動産収入が継続的に入るため、金融資産が減りません。何か良い方法はありませんか。

 継続的に所有不動産からの収入が入ってくる方にとっては、現金贈与による対策は“焼け石に水”という場合があります。入ってくる不動産収入以上に贈与すれば、財産を減らしていくことはできますが、それでは贈与税の負担ばかりが大きくなります。そこで発想の転換をし、入ってくる不動産収入を減らすことを考えてみてはいかがでしょうか?
 収入を減らすといっても、入居者から頂く賃貸料を減らしたり、賃貸を止めたり、本当に入ってくる収入を減らしてしまっては本末転倒です。子や孫へ現金を贈与する代わりに、将来の不動産収入の元となる資産を贈与してしまうのです。

 具体例で見てみましょう。

 賃貸マンションを贈与しても、毎年現金700万円を贈与しても、毎年700万円というお金が子の懐に入るということに変わりありません。にも拘わらず、10年後にトータルで支払うべき税額で918万円もの差が生じる結果となりました。

 収入のある不動産を贈与するということは、その物件から将来的に生ずる収入を、無税で贈与できる、という効果をもたらします。
 また、子の方が適用される所得税率が低い場合には、所得税負担が軽減されることもあるでしょう。

 不動産収入の贈与のポイントは、該当不動産全てを贈与するのではなく「建物のみ贈与する」ということです。敷地も贈与を受けるとなると、贈与税が非常に高額になってしまいます。入居者から家賃を受け取るべき人は、建物の所有者です。従って、敷地の所有は父のまま無償(使用貸借)で借りれば良いのです。
 ただし、土地の評価に当たっては注意が必要です。賃貸マンションの敷地は、本来なら貸家建付地評価として評価額から一定額控除できます。しかし、「建物名義が子」、「土地名義が父」の場合で土地の使用対価が無償であれば使用貸借となり、敷地を評価する際には、原則として貸家建付地割合を控除することができません。

 また、賃貸マンションの建築に係る借入金の残債がある場合にも注意が必要です。賃貸マンションの贈与とともに借入金も引き継がせた場合には、負担付贈与に該当します。負担付贈与の場合には、受贈者は時価により贈与税課税され、また、贈与者は時価で譲渡したものとみなして譲渡所得税が課税されます。

 賃貸物件の贈与は、贈与から相続開始までの期間が長ければ長いほど、移転できる不動産収入が多くなり、贈与による効果が大きくなります。

 物件の利回り、敷地の相続税評価額、建物の取得に係る借入金の有無などを考慮し、的確な物件を選定することで、大きな税効果が期待できます。収益物件を所有されている方は、一度ご検討ください。

 

<まとめ>

  • 「建物名義が子」「土地名義が父」の場合で土地の使用対価が無償であれば、敷地の相続税評価は使用貸借として自用地評価となります。
    貸家建付地評価と自用地評価との差額による相続税への影響に注意しましょう。
  • 早期贈与で収入移転額をより大きくしましょう。
    少しでも多くの不動産収入を次世代に移転させることにより、より一層の税効果が期待できます。
  • 借入金の残債がない建物を選定しましょう。
    贈与とともに借入金も引き継がせる場合には負担付贈与となり、贈与税と所得税のどちらも課税される場合があります。

<根拠条文> 相法19、21の9~15、昭和48年11月1日付直資2-189

 

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賃貸マンションなど相続税対策についてお困りなら京都のシモヤマ会計事務所まで

相続税対策なら京都のシモヤマ会計事務所へ

名称 シモヤマ会計事務所(下山弘一税理士事務所)
所在地 〒604-8471 京都市中京区西ノ京中御門東町101
電話番号 075-813-4850
FAX 075-813-4851
URL http://e-komon.jp/
概要 賃貸マンションなど、相続税対策についてお悩みの際は京都のシモヤマ会計事務所までお問い合わせください。20年の豊富な実績でお客様をサポートいたします。相続税対策やクラウド会計については、相談無料のシモヤマ会計事務所へ。

 高圧線が土地の上空を通っていると、相続税評価額は低くなりますか。

 高圧線が相続する予定の土地(宅地)の上空を通っています。このような場合、相続税評価額は低くなるのでしょうか。

 ご相談のケースの土地が「高圧線下地」であれば、相続税評価額の計算上、「区分地上権に準ずる地役権」に該当し、一定の減額が認められています。

 一般に「特別高圧」(7000ボルト以上)の送電線の下に位置する土地を、「高圧線下地」といいます。この「高圧線下地」における土地の利用は、高圧線の電圧に応じて一定の建築制限が課されることから、土地の価値が下がることが一般的です。

 相続税の計算においても、その土地の評価額について一定の配慮があります。「高圧線下地」の場合、上空を高圧線が通っていることから、実質的には区分使用のために地役権を設定しているものとして、「区分地上権に準ずる地役権」に該当し、相続税・贈与税を計算する際に対象財産の価額評価基準として国税庁が定めている財産評価基本通達において、次のように評価方法が定められています。

27-5 区分地上権に準ずる地役権の価額は、その区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の自用地としての価額に、その区分地上権に準ずる地役権の設定契約の内容に応じた土地利用制限率を基とした割合(以下「区分地上権に準ずる地役権の割合」という。)を乗じて計算した金額によって評価する。  この場合において、区分地上権に準ずる地役権の割合は、次に掲げるその承役地に係る制限の内容の区分に従い、それぞれ次に掲げる割合とすることができるものとする。(平3課評2-4外追加、平6課評2-2外・平12課評2-4外改正)
(1) 家屋の建築が全くできない場合 100分の50又はその区分地上権に準ずる地役権が借地権であるとした場合にその承役地に適用される借地権割合のいずれか高い割合
(2) 家屋の構造、用途等に制限を受ける場合 100分の30

 

 ここで「区分地上権」とは、工作物を所有するため、他人の土地の地下または空間を上下の範囲を定めて使用できる権利(地上権)をいいます。この「区分地上権」は、工作物の所有目的に限られることや土地所有者にとって負担が大きいことから、地役権という権利で代替されることがあります。地役権とは、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利をいい、便益を供する側の土地を「承益地」、便益を受ける側の土地を「要益地」といいます。

 「区分地上権に準ずる地役権」は、登記されている場合とされていない場合があります。公図からも読み取れないため、住宅地図などで近くに鉄塔がないか、あった場合には鉄塔と鉄塔を結ぶ線が対象土地の上を通過していないかを机上で調べる必要があります。さらに、現地で上空を見渡して確認することも必要です。制限の内容などは地役権の設定登記や電力会社との契約を確認することになりますが、不明な場合は鉄塔に番号札が掲示されていますので、その番号に基づき電力会社に利用制限内容を問い合わせることになります。

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 相続した実家を売却する場合の税金の特例について、教えて下さい。

 昨年実家で一人暮らしをしていた母が亡くなりました。実家の土地建物は私が相続しましたが、私もマイホームを別に構えており、実家を管理所有し続けていくのは難しい状況であるため、売却することにしました。相続した実家を売却する場合の税金の特例について、教えて下さい。

 相続されたご実家を売却した場合には、その譲渡所得を計算する際に「空き家に係る譲渡所得の特別控除」または「相続税の取得費加算の特例」を適用できる可能性があります。

 空き家に係る譲渡所得の特別控除とは、相続人が被相続人の居住用家屋を相続した場合で、一定の要件に該当するときは、その家屋及びその敷地の譲渡所得から3,000万円の特別控除額を控除することができる特例です。

 

 相続税の取得費加算の特例とは、相続人が相続により取得した土地、建物、株式などを、一定期間内に譲渡した場合に、その相続人が納付すべき相続税額のうち、一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる特例です。

 なお、これらの特例は併用できません。どちらか一方を選択し、適用します。また譲渡期限にもご注意ください。

<まとめ>

  • 「空き家に係る譲渡所得の特別控除」と「相続税の取得費加算の特例」は、併用適用することができません。

<根拠条文> 所法33、38、措法35、39、措令20の3、23、24の2、25の16、措規18の2、18の18

 

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 今回は相談事例を通じて、生前贈与の法律上の取扱いについてご紹介します。

 相続対策として、生前に子供(推定相続人)に贈与したいと思っています。贈与税や相続税についての留意点はよく聞くのですが、実際に相続が起きた場合に何か相続人間で問題になることはあるでしょうか。

 最近、相続対策としての「生前贈与」の活用をよく耳にします。皆さんの中にも、お子様へ生前贈与をされている方も多いのではないでしょうか。

 贈与税や相続税についての取り扱いについては、心配でご自身で調べたり税理士さんに相談したりする方も多いと思われますが、この生前贈与、実際に相続が起こったときの取り扱いについては意外と知られていないのが実情です。

 民法上、相続人間での遺産分割協議や遺留分減殺請求をする際には、相続人に対してされた生前贈与は、「特別受益」といわれ、生前贈与がされた時期に関係なく、各人の具体的相続分や遺留分の算定に、生前贈与を含めて(これを「持ち戻し」といいます)計算されてしまいます。贈与者の意思で特別受益の持ち戻しを免除することは認められていますが、それでも相続人の遺留分を侵害することはできず、将来的に生前贈与を巡って争いになることは決して少なくありません。

 特に、事業承継の一環として自社株を生前贈与した場合などは、相続開始時の評価で持ち戻しの計算をしますので、贈与当時から株価が上昇していると、想定外の事態に陥ることもあります。

 このように、生前贈与の取り扱いは、税務上だけでなく、相続人間でも重要な問題となりますし、その計算過程も複雑ですので、贈与をご検討の際には一度専門家に相談されることをおすすめします。

 

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弊事務所の年末年始休業日をご案内いたします。

ご不便をお掛けいたしますが、何卒ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

■年末年始休業日
 2016年12月29日(木)~2017年1月4日(水)

 夫婦間での贈与について、税を優遇してもらえるような特例はありますか?

 親から子へ贈与した場合には、贈与税率が軽減されると聞きました。その他、親から子への贈与には将来の相続税との課税の選択ができる相続時精算課税制度があるとも聞いています。このように親子間の贈与では、色々な特例が設けられているようですが、夫婦間での贈与について、税を優遇してもらえるような特例はないのでしょうか?

 夫婦間の贈与で適用ができる特例といえば、「贈与税の配偶者控除」があります。

 贈与税の配偶者控除とは、夫婦間で、居住用の不動産又は居住用の不動産を取得するための金銭(以下、居住用不動産等)を贈与した場合、110万円の贈与税の基礎控除以外に最大2,000万円を控除することができる特例です。すなわち居住用不動産等については、最大2,110万円まで無税で贈与することができます。
 この制度の適用を受けるためには、原則として贈与を受けた年の翌年3月15日までに、一定の書類を添付した贈与税の申告書を税務署へ提出する必要がありますが、贈与税の申告が期限から遅れても、期限後申告を行うことで適用を受けることができます。
 この特例を適用した贈与は夫婦間で財産を分散させ、将来の相続税負担を軽減させるための対策として、広く検討されています。また相続開始前3年以内の贈与であっても、配偶者控除額に相当する部分は相続財産に加算する必要がありませんので、場合によっては相続直前の対策として非常に高い効果を発揮できます。
 ただし、同じ配偶者からの贈与については一生涯に一度しか適用できません。重複適用にご注意ください。

<制度の適用要件>

  1. 贈与する時点で、婚姻期間が20年以上である夫婦間の贈与であること。
  2. 贈与を受けた財産が、受贈者が居住するための不動産又は居住するための不動産を取得する金銭であること。
  3. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その不動産又はその金銭で取得した不動産に、受贈者が居住し、その後も引き続き住み続ける見込みであること。

<添付書類>

  1. 戸籍謄本又は抄本(贈与後10日を経過した日以後に取得したもの)
  2. 戸籍の附票の写し(贈与後10日を経過した日以後に取得したもの)
  3. 居住用不動産の登記事項証明書等
  4. その居住用不動産に居住した日以後の住民票の写し

<まとめ>

  • 贈与税の配偶者控除とは、居住用不動産等を2,110万円まで無税で贈与できる特例です。
  • 同じ配偶者からの贈与について、一度しかこの特例の適用をすることはできません。
  • 相続開始前3年以内の贈与であっても、一定額までは相続財産に加算されません。

<根拠条文> 相法21の5、21の6、相規9、措法70の2の4

 

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 不動産を購入した際の売買契約書や領収書などは、保管しておく必要はありますか。

 父から不動産を相続することになり、不動産に関する書類を整理しています。権利証については重要な書類と認識して保管していますが、不動産を購入した際の売買契約書や領収書などは、今後も保管しておく必要がありますか。

 将来不動産を売却した際に、税金の計算上有利に働く可能性がありますので、売買契約書や領収書などの資料は、引き続き保管してください。

 不動産の売却により譲渡益が生じれば、所得税と住民税が課税されます。所有期間が5年超(10年超所有の居住用の特例を除く)の場合の税率は、所得税15.315%(復興特別所得税を含む)と住民税5%の合計20.315%となり、税額は以下のとおり計算します。なお、相続した不動産の所有期間は被相続人が所有していた期間も含まれます。

 譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)×20.315
  
 取得費は、不動産を購入した金額(建物については、事業用の場合、減価償却費控除後の帳簿価額になり、居住用の場合、減価償却費の計算が必要で、控除後の価額になります。)になり、取得費を証明する書類には、売買契約書や領収書などがあります。取得費を証明する書類がない場合、取得費は、譲渡収入金額の5%で計算することになります。

 では、10年所有した土地建物(取得費1億2千万円)を1億5千万円で売却した場合、取得費を証明する書類の有無により、税額がどの程度変わるのかを比較してみます。なお、譲渡費用は5百万円とします。

①取得費を証明する書類がない場合の税額
150,000,0000円×5%=7,500,000円
150,000,0000円-(7,500,000円+5,000,000円)×20.315%
=27,933,100円(100円未満切り捨て)

②取得費を証明する書類がある場合の税額 
150,000,0000円-(120,000,000円+5,000,000円)×20.315%
=5,078,700円(100円未満切り捨て)

①-②=22,854,400

 この事例では、取得費を証明する書類がなければ書類がある場合に比べて、約22百万円も多く税金を支払うことになります。このように適正な税金を納めるためにも、売買契約書や領収書など取得費を証明する書類は保管しておくことが必要です。

 なお、取得費を証明する書類以外にも、不動産の書類には建築確認済証や検査済証、確定測量図などがあります。これらの書類も不動産を売却するときはもちろん、建物の修繕や、隣接地との境界を証明する際に役立ちますので、大切に保管されることをお勧めします。

 

 

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