お知らせ

 相続人に配偶者と障害者がいるとき、配偶者の税額軽減の特例を最大限受けることが相続税の負担を一番減らすことになるのでしょうか?




 我が家には、身体に重度の障害(身体障害者1級)を持った長女(52歳)がいます。先日、夫が亡くなったのですが、長女の将来を考え、長女には夫の遺産の大部分を相続させてやりたいと考えています。それについては、他の兄弟も納得してくれています。しかし、相続税の負担もなるべく減らしたいと考えています。そのためには、配偶者である私が法定相続分又は1億6,000万円までを相続し、配偶者の税額軽減の特例を最大限受けるのが一番よい選択なのでしょうか?




 配偶者の税額軽減の特例だけにこだわらなくても、障害者控除により全体の納付税額のご負担が軽減される可能性もあります。ご長女様の将来もよく考えながら、様々なご検討をなさることをお勧めします。




 配偶者の税額軽減の特例とは、被相続人の配偶者について一定の金額まで相続税が発生しないという特例制度です。これは残された配偶者の生活保障のため、という背景がありますが、相続税の計算においては各相続人の個別事情等に配慮して、この配偶者の税額軽減の特例以外にも、算出相続税額から控除できる税額控除がいくつか設けられています。

 その税額控除の中の1つに、「障害者控除」という制度があります。これは、社会的弱者である障害者が相続により財産を取得した場合には、算出相続税額から一定額を差し引くという制度です。

 では、障害者控除の適用要件や控除金額などを、具体的にみてみましょう。1.障害者控除を受けられる相続人

 次の要件すべてに当てはまる人は、障害者控除の適用を受けることができます。

  • 相続等で財産を取得したときに日本国内に住所がある人(一定の人を除く)
  • 相続等で財産を取得したときに障害者である人
  • 相続等で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、なかったものとした場合の相続人)であること

2.控除額

  • 一般障害者  10万円 ×(85歳-相続開始時の年齢)*
  • 特別障害者  20万円 ×(85歳-相続開始時の年齢)*
  1. * 85歳に達するまでの年数で、1年未満の期間があるときは、1年切り上げて1年として計算
  2. * 過去に他者からの相続において、障害者控除の適用を受けている場合には、控除額が制限されます。

3.障害者の区分

  1. 一般障害者
    身体障害者手帳の等級:3級~6級精神障害者福祉健康手帳の等級:2級、3級
  2. 特別障害者
    身体障害者手帳の等級:1級、2級精神障害者福祉健康手帳の等級:1級

4.留意点(1)障害者控除額が引ききれない場合

 障害者控除額が、その障害者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が引ききれない場合には、その引ききれない部分の金額をその障害者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。

 この場合の扶養義務者とは、配偶者、直系血族(父母や子、孫)及び兄弟姉妹などをいいます。なお、この扶養義務者は「同居」や「生計一」である必要はありません。

 扶養義務者が2人以上ある場合の、それぞれの控除額は扶養義務者間での協議により自由に配分することができます。(2)その他

 障害者控除は、その障害者が何も財産を相続していない場合には控除することができません。また、この場合には他の扶養義務者である相続人からも控除することはできません。5.今回の場合

 例えば算出相続税額が下表であった場合の配偶者の税額軽減と障害者控除の適用額は、それぞれ下表のとおりです。(単位:万円)

長女長男次男合計
算出相続税額5003001001001,000
配偶者の税額軽減-500-500
障害者控除-300-100-100-500
納付税額00000

 お母様が相続された部分は、一定額まで配偶者の税額軽減の適用があり、税負担が軽減されます。

 また、ご長女が相続された部分は、ご長女の算出税額から障害者控除(限度額:20万円×(85歳-52歳)=660万円)が控除されます。この場合、控除しても控除しきれない障害者控除額があるときは、その控除しきれない金額は上記表のとおり、ご長男やご次男の算出税額から控除することができます。

 このように、どのような配分にすることが最も相続税の負担が軽減されるかは、ケース・バイ・ケースといえます。相続税の負担だけがすべてではありませんので、ご家族皆様の将来を見据えて最もよい選択ができるよう、いろいろな角度から検討されるとよいでしょう。相続税について、分からないことがありましたら、お気軽に当事務所へお問合せください。


<参考>
 相法1の2、1の3、19の4、相令4の4、相基通1の2-1、国税庁タックスアンサー「No.4167 障害者の税額控除」など
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 令和3年(2021年)の地価公示の結果と土地の相続税評価額の関係について、教えてください。

 令和3年(2021年)の「地価公示価格」が発表された、というニュースを見ました。今回の地価公示の結果の特徴について、教えてください。また、今回の地価公示の結果と土地の相続税評価額との関係は、どのようになっているのでしょうか?

 令和3年(2021年)の地価公示では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、全用途の全国平均は、平成27年(2015年)以来6年ぶりに下落に転じました。

 まず、地価公示の結果から確認しましょう。

1.令和3年(2021年)の地価公示

 用途別にみると、住宅地は平成28年(2016年)以来5年ぶり、商業地は平成26年(2014年)以来7年ぶりに下落に転じ、工業地は5年連続で上昇したものの上昇率は縮小しました。

 東京、名古屋、大阪の三大都市圏をみると、全用途平均・住宅地・商業地はいずれも平成25年(2013年)以来8年ぶりに下落となりました。工業地は7年連続で上昇しましたが、上昇率は縮小しました。

 地方圏平均をみると、全用途平均・商業地は平成29年以来(2017年)4年ぶりに、住宅地は平成30年(2018年)以来3年ぶりに下落に転じ、工業地は4年連続で上昇したものの上昇率は縮小しました。

 今回の地価公示では、新型コロナウイルス感染症の影響により全体的に弱含みとなりましたが、地価動向の変化の程度は用途や地域によって異なる結果となりました。昨年からの変化は、用途別では商業地が住宅地より大きく、地域別では三大都市圏が地方圏より大きくなりました。

2.地価公示の結果と土地の相続税評価額との関係

 次に、今回の地価公示の結果と土地の相続税評価額との関係についてみてみましょう。

 まず、地価公示価格ですが、相続税評価の基準になるとされています。相続税や贈与税の申告にあたっては、一般的に路線価等(いわゆる相続税路線価)が用いられますが、相続税路線価は、地価公示価格の水準の80%程度で評価されており、その均衡化・適正化が図られています。

 なお、地価公示価格、相続税路線価ともに毎年1月1日が評価の基準日とされていますが、地価公示の発表は例年3月下旬(今年は3月23日)、相続税路線価の発表は例年7月初旬となっており時間差があります。

 今回の地価公示で地価が最も大きく下落したのは、大阪ミナミや名古屋の錦といった繁華街・歓楽街でした。インバウンド客をはじめとする観光需要の消失や、会食需要の減退による飲食店の利用客減といった、まさに新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けた格好となりました。

 なお、昨年分である令和2年分(2020年分)の路線価では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は反映されていなかったことから、地価が20%超下落した大阪ミナミや名古屋の錦辺りでは、評価月によって路線価に調整率を乗ずる形で、地価変動補正が適用されました。

 今回の地価公示では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が反映された結果となっており、地価が大きく変動している地点の付近については、7月に発表される相続税路線価も大きく変動し、相続税額にも影響を与える可能性があります。

 土地の相続税評価については、当事務所までお気軽にご相談ください。

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 満期を過ぎた外貨建て保険の請求手続きと、課税上の取扱いを教えてください。

 外貨建て養老保険に加入していた夫が、今年1月に満期を迎えた保険金の請求手続きを行うことなく、4月に亡くなりました。保険証券を確認したところ、死亡保険金の受取人は配偶者である私と長男、5割ずつ指定されています。
 また、外貨で受け取ることができる旨の記載があるので、私も長男も外貨受け取りを希望しています。
 満期が過ぎている契約ですが、死亡保険金として請求をするのでしょうか。
 また、税金はかかりますか?
 なお、相続人は、私(配偶者)、長男、次男の3人です。

【外貨建て養老保険の契約内容】
  • 保険種類:米ドル建て養老保険
  • 契約期間:10年
  • 契約者(保険料負担者):夫
  • 被保険者:夫
  • 満期保険金受取人:夫
  • 死亡保険金受取人:配偶者・長男 各5割
  • 死亡、満期保険金:200,000米ドル
  • 全期前納保険料:175,000米ドル

 ご相談の契約は、ご主人がお亡くなりになる前に満期が到来しているため、保険会社への請求手続きは死亡保険金ではなく、未請求であった満期保険金となります。この満期保険金は、ご主人の所得として所得税の課税対象となる他、ご主人の相続財産に加算します。また、所得税が課税されることにより納付すべき所得税が発生した場合は、相続税の計算上、ご主人の債務として遺産総額から控除できます。なお、申告上、外貨建ての財産は円建てに換算する必要があります。換算する際の為替レートは決められており、各々適用される為替レートは詳細解説にてご確認ください。

1.死後に行う満期保険金の請求手続き

 保険金の請求手続きが被保険者の死亡後であっても、被保険者が死亡する前に満期を迎えていれば、死亡保険金としては扱われず、満期保険金としての請求手続きとなります。この満期保険金の課税の取扱いは、以下のとおりです。

(1)所得税

 ご相談の満期保険金は、満期が到来した年分のご主人の一時所得として、所得税の課税対象となります。実務上は、ご主人に代わり相続人が準確定申告を行い、納付すべき所得税が生じた場合には納付することとなります。

(2)相続税

 相続税の計算上、ご相談の満期保険金は、相続人共有の財産(未収入金)として、相続財産に加算します。死亡保険金ではないため、保険金の非課税制度(500万円×法定相続人の数)を適用することはできません。

 また、(1)により所得税を納付することとなった場合には、その所得税は相続税の計算上、債務として遺産総額から控除できます。

2.外貨で受け取るときの為替レート

 外貨建て保険を外貨で受け取る場合、税金を計算する上では、円換算する必要があります。この際に適用される為替レートは、次のとおりです。

【所得税の評価】
  • 全期前納保険料:原則として払込日(保険会社受領日)のTTM(※)
  • 満期保険金:原則として支払事由発生日(満期日)のTTM(※)
【相続税の評価】
  • 未請求であった満期保険金相当額:原則として支払事由発生日(死亡日)のTTB(※)
(※)TTS…対顧客直物電信売相場、TTB…対顧客直物電信買相場、TTM…TTSとTTMの仲値

 請求すべき手続きの放置期間が長くなるほど、証拠書類が探し出せずに手続きが煩雑になりがちです。他に手続きが放置されているものがないか、確認をしましょう。

 相続に関するご不明な点は、当事務所へお気軽にご相談ください。

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 今回は相談事例を通じて、不在者財産管理人についてご紹介します。

 先日、母が他界しました。父は5年前にすでに亡くなっており、相続人は私と妹の2人だけです。母の相続財産は、自宅土地建物(評価額約2,000万円)と預貯金約2,000万円です。遺言書はありませんでした。私は以前から母の自宅に同居しており、今後もここに住み続けたいので、自宅土地建物は私が相続したいと思っています。不動産の登記名義を変更するには相続人全員による遺産分割協議が必要と聞きましたが、妹は10年程前から行方不明で連絡も取れず、協議をすることができません。どうしたらよいでしょうか?

 このような場合、家庭裁判所に妹様の不在者財産管理人の選任を申立て、選任された管理人と遺産分割協議をすることができます。

 不在者財産管理人とは、不在者(妹様)に代わって財産を管理する人のことです。不在者が財産管理人を置いていない場合には、利害関係人は不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に請求することができます(民法25条)。
 本件では、妹様が行方不明のため遺産分割協議ができないという利害関係がありますから、選任の申立てをすることができます。不在者財産管理人は、家庭裁判所の許可を得て、本人に代わって遺産分割協議をすることができます。

 不在者財産管理人には、利害関係のない親族等、または弁護士、司法書士等の専門家が選任されます。選任の申立て時に候補者を立てることができますが、必ずその候補者が選ばれるわけではありません。利害関係がある、財産が複雑、高額等の事情があれば専門家が選任される可能性が高いです。

 なお、専門家が選任された場合、毎月の報酬や、遺産分割協議に係る報酬等が発生します。これらの報酬は不在者の財産から支払われます。また、不在者財産管理人の職務は、遺産分割協議が整っても終わらず、不在者が見つかったとき、亡くなったとき、財産が無くなったとき等まで続く点に注意が必要です。

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 夫婦間での贈与について、税を優遇してもらえるような特例はありますか。

 親から子へ贈与した場合には、贈与税率が軽減されると聞きました。その他、親から子への贈与には将来の相続税との課税の選択ができる相続時精算課税制度があるとも聞いています。このように親子間の贈与では、色々な特例が設けられているようですが、夫婦間での贈与について、税を優遇してもらえるような特例はないのでしょうか?

 夫婦間の贈与で適用できる特例として、「贈与税の配偶者控除」があります。

1.贈与税の配偶者控除とは

 贈与税の配偶者控除とは、夫婦間で、居住用の不動産又は居住用の不動産を取得するための金銭(以下、居住用不動産等)を贈与した場合、110万円の贈与税の基礎控除以外に最大2,000万円を控除することができる特例です。すなわち居住用不動産等については、最大2,110万円まで贈与税がかからずに贈与をすることができます。

【制度の主な適用要件】
  • ①贈与をする時点で、婚姻期間が20年以上である夫婦間の贈与であること
  • ②贈与を受けた財産が、受贈者が居住するための不動産又は居住するための不動産を取得する金銭であること
  • ③贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その不動産又はその金銭で取得した不動産に、受贈者が居住し、その後も引き続き住み続ける見込みであること
2.制度の適用を受けるには

 この制度の適用を受けるには、以下に記載した一定の書類を添付した贈与税の申告書を、税務署へ提出する必要があります。提出期限は、原則として贈与を受けた年の翌年3月15日ですが、この期限から遅れても申告を行う(期限後申告をする)ことで適用を受けることができます。

【申告時に必要となる主な添付書類】
  • ①戸籍謄本又は抄本(贈与後10日を経過した日以後に取得したもの)
  • ②戸籍の附票の写し(贈与後10日を経過した日以後に取得したもの)
  • ③居住用不動産の登記事項証明書等、受贈者が取得したことを証するもの

 この特例を適用した贈与は、夫婦間で財産を分散させ、将来の相続税負担を軽減させるための対策として、広く検討されています。また、相続開始前3年以内の贈与であっても、配偶者控除額に相当する部分は相続財産に加算する必要がありませんので、場合によっては相続直前の対策として、非常に高い効果を発揮します。

 ただし、同じ配偶者からの贈与については一生涯に一度しか適用できない他、贈与後の不動産に係る税金(不動産取得税、登録免許税等)や、受贈者が贈与後に死亡してしまった場合など、留意点もございます。

 相続対策について詳細をお知りになりたい方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

<参考>
相法21の5、21の6、相規9、措法70の2の4、国税庁HPタックスアンサー「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」など
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 将来相続する予定の土地の境界上にある塀の対処法について、教えてください。

 築30年の実家と隣接地との境目にあるブロック塀は、境界の真ん中に建っており、外見上は共有のように見えます。両親は高齢で、相続時には私がその実家を相続する予定です。私自身はお隣の方とはほとんど面識がないのですが、今のうちに何か対応をしておいたほうがよいことはありますか?

 ご相談のような境界上にある塀については、まず境界線を確定させ、その上で塀の所有者を明らかにした後、その状況次第で対応策を考えていく必要があるでしょう。

 最近建築された住宅ではあまり見かけませんが、昔は境界上に、共有のような状態でブロック塀が建築されていることが多くありました。
 こういった境界上にあるブロック塀等については、「土地の境界」と、「ブロック塀の所有者」について分けて考える必要があります。

1.土地の境界の確定

 まず、土地の境界をはっきりさせます。具体的には、境界線が明確であるか否かを確認しましょう。もし明確でなければ、土地家屋調査士へ依頼し、確定測量を実施することで、隣接地との境界線を確定させることができます。

2.ブロック塀の所有者の確定

 境界線を確認した後、ブロック塀が境界線の内側か外側いずれにあるのか確認します。仮に、境界線上にブロック塀が存在したとしても、それをもってブロック塀が共有とは判断できません。あくまで「土地の境界」が確定しただけで、「ブロック塀の所有者」が確定したことにはなりません。

 「ブロック塀の所有者」を確認する方法としては、まずこちらが所有者であるかの根拠を確認します。建築当時の図面や注文書等や、ブロック塀をこちらが建築した根拠があるかを探します。そういった根拠がなければ、お隣の方に確認し、その所有者を確定していくことになります。

3.留意点
(1)所有者不明の場合

 しかしながら、実際には所有者確定の根拠となる書類はなく、また昔のことでこちらもお隣の方も覚えていないことも多くあります。そのような場合は、話し合いで「共有」とするのか、もしくはどちらかの所有とするのかを取り決めます。

 「共有」の場合、維持管理費用は折半となりますが、どちらか一方の一存で取り壊すことはできなくなります。逆にこちらの所有の場合、維持管理費用はこちらの負担となりますが、建物取り壊し等の際には、自由に取り壊すことができるようになります。

(2)越境

 そして、もう一つ考慮しなければいけないことがあります。それは「越境」についてです。「越境」とは、建物や構造物が境界線を越えて隣接地内に存する状態のことを指します。今回のご相談のケースで、仮に所有者を共有と取り決めた場合、「共有のブロック塀が相互の所有地に越境している」状態となります。

 この場合、建物を取り壊し、更地として売却する際、共有のブロック塀が越境している状況を買主様に容認していただくか、もしくはブロック塀の撤去をお隣の方に容認していただく必要が生じ、共有であることが後の売却時に支障となる可能性があります。

 よって、今のうちにご両親の認識を伺う等して、ブロック塀の所有者確認の作業を開始されてはいかがでしょうか。その上で、将来的な方向性も含めて専門家に相談なさるとよいでしょう。

 将来の相続に不安のある方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

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 指定受取人が受取った死亡保険金を、他の相続人に分与した場合の課税関係を教えてください。

 夫が亡くなり、配偶者である私が受取人に指定されている以下の死亡保険金を受け取りました。
 この死亡保険金を子どもと半分ずつ分けよう思いますが、どのような税金がかかるのでしょうか。

【生命保険の契約内容】
  • 契約者(保険料負担者):夫
  • 被保険者:夫
  • 死亡保険金受取人:私(配偶者)
  • 死亡保険金 :5,000万円

 ご相談の場合、ご相談者様からお子様への贈与となり、贈与税がかかります。

1.指定受取人が受け取る死亡保険金の税務上の取扱い

 契約者であり、被保険者である被相続人(ご主人)が特定の相続人であるご相談者様を受取人に指定しているときに、その受取人が死亡保険金を受け取る行為は、『保険契約に基づく行為』となります。

 保険契約に基づく行為であるため、この保険金請求権は、ご相談者様の固有財産となります。

 つまり今回、死亡保険金の指定受取人であるご相談者様が受け取る死亡保険金は、相続により取得するものではありません。

 ただし、相続税を計算する上では、相続により取得したものと“みなして”、相続財産に含めます。

2.死亡保険金を子どもに分けることによる課税関係

 ご相談者様の固有財産である死亡保険金をお子様に分けるということは、単なる贈与にすぎません。よって、お子様に贈与税が課せられることになります。

3.死亡保険金を分けることを“贈与”としないための方法

 死亡保険金をご家族内で分けることが贈与とならないように、ご家族それぞれが取得するためにはどうしたらよいでしょうか。

 この場合、保険契約時当初から死亡保険金受取人をご家族に指定しておきます。

 この指定は、契約者が行います。

 具体的には、指定受取人を記入する際に、「良子(配偶者)50%、太郎(子ども)50%」などと、明記しておきましょう。こうしておくことで、死亡保険金を贈与とならないように家族で分けることができます。

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文書作成日:2021/02/20

 今回は相談事例を通じて、相続人以外の人が相続人の調査を行う場合の留意点などについてご紹介します。

 先日、姉が亡くなりました。姉の夫は数年前に亡くなっており、姉の財産の管理は妹である私が行っていました。姉には子がいましたが、長年交流がなく連絡が取れません。
 相続人である姉の子に連絡を取り、現在私が預かっている通帳などを引き渡したいので、先日、本籍のある市町村役場に相談したのですが、姉の戸籍は取得できませんでした。私は戸籍を取得できないのでしょうか。

 あなたは相続人ではありませんので、戸籍は取れませんと言われたのかもしれません。一方であなたは、お姉様の財産を預かっていたとのことですので、管理していた財産を相続人に引き渡してあげないと相続人は困ってしまうと思われます。
 民法上も、財産を管理していた人には相続財産を相続人に引き渡す義務があるため、「義務を履行するため」という理由を示すことで、お姉様の戸籍を取得することができると考えられます。

 あなたは義務なく事務の管理を始めた者(管理者)として、事務管理を行っていることになります(民法第697条)。
 お姉様の事務管理者として、あなたは相続人に相続財産を引き渡す義務があります。そのためには戸籍を取得して相続人に連絡を取る必要があります。よって、「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合」に該当し、戸籍を請求することができます(民法第700条、第701条、第646条、戸籍法第10条の2第1項第1号)。

 戸籍を、本人やその配偶者、直系尊属(父母・祖父母等)若しくは直系卑属(子・孫等)以外の者が請求できる場合は限定されており、特に事情がない場合は、ご兄弟であるあなたがお姉様の戸籍を請求することはできません。あなたが戸籍を請求するためには、あなたが事務管理者であること、戸籍を必要とする理由等を示していただく必要があります。

 戸籍を集め、相続人が明らかになったときには、当該相続人に相続財産の引き渡しを行ってください。なお、あなたが相続人の代わりに固定資産税等の支払いをしている場合は、立て替えている金銭を相続人に請求することができます。(民法第702条)
 なお、戸籍を請求する際、請求者が相続人ではないため、市町村役場の窓口では戸籍の依頼から発行までに時間がかかる場合があります。また、戸籍を集めた結果、面識のない相続人に連絡を取らなければならない可能性もありますので、お悩みの際は専門家にご相談されることをお勧めします。

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文書作成日:2021/02/05

 相続人が立て替えた葬儀費用は、相続税を計算するときに相続財産から控除できるのでしょうか。

 父が亡くなった際に、子である私が喪主を務めました。参列者から香典も頂きましたが、葬儀社やお寺への支払い、香典返しなどに結構お金がかかり、私が立て替えています。これらの支払った費用は、父の相続財産から返してもらえるのでしょうか?
 また、相続税を計算するとき、相続財産から控除してもらうことはできますか?
 なお、私は日本国籍を有しており、かつ、日本国内に住所があります。

 喪主が立て替えた葬儀費用については、遺産分割協議を通じて香典や相続財産から精算するのが一般的です。また相続税の計算上、一定の相続人等については一定の範囲内で相続財産から控除することができます。

1.葬儀費用の立替と精算

 葬儀は、前もって準備万端、ということはまずなく、段取りや費用のことなど、悲しむ間もなくどんどん進めなくてはなりません。そのような中にあって多額の支払いが発生し、喪主の方が立て替え払いをすることは、よくあることといえます。

 実際にはその後の遺産分割協議において、相続人全員で相続財産の配分を決めるとともに、葬儀費用の負担割合を決定し、香典の精算などを行うことになるでしょう。香典で精算できなかった部分は遺産分割協議が調い、相続財産を配分する段階で精算し返してもらう、という手続きが一般的です。

2.相続税を計算する上での取扱い

 相続税を計算する上での取扱いとしては、葬儀費用を負担した一定の相続人(包括受遺者を含む)は、その人の取得した相続財産から控除することが認められています。

 ただし、下表のとおり控除できる費用と控除できない費用があります。

控除可能(=OK)
控除不可(=NG)
  • 埋葬、火葬、納骨、遺骨の回送等に必要な費用
  • お布施など葬儀に関して支払ったお礼などの費用
  • 葬儀の前後に支払った費用で、通常葬儀に伴って必要となる費用
  • 死体の捜索又は運搬に必要な費用
  • 香典返しの費用
  • 墓石や墓地、仏壇、仏具などの購入費用
  • 法要の費用(初七日等)
  • 検死費用など特別の処置に係る費用

 葬儀は、宗教や地域の慣習により、その様式や所要期間など、実に様々です。また、故人の生前の社会的地位によっても、必要となる費用は異なってくると想定されます。

 あくまでも上記の表は、どこまでを葬儀費用と認めるかという範囲を示したものに過ぎないため、葬儀費用の控除に当たっては支払いの名称だけでなく、地域や故人の地位等を勘案した上で葬儀に必要な費用なのか、支払い内容にも着目しながらの判断が必要となります。

3.葬儀費用として控除できる相続人等

 葬儀費用の負担者すべてが控除できるわけではなく、上記2.に記載したとおり、『一定の相続人(包括受遺者を含む)』に限定されています。

 今回のご相談のケースについて、ご相談者が葬儀費用の負担者となった場合には、相続により財産を取得している『日本国籍を有しており、かつ、日本国内に住所がある』相続人として、上記2.の表にある控除可能な葬儀費用に該当する部分について、控除をすることができます。

 なお、この『一定の相続人(包括受遺者を含む)』の範囲について、詳細をお知りになりたい方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

<参考>
相法13、相基通13-4、13-5など
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文書作成日:2021/01/20

 不動産投資として購入を検討している、分譲マンションと不動産小口化商品について、それぞれの特徴を教えてください。

 資産運用及び相続対策として、単身向け分譲マンション又は不動産小口化商品の購入を検討しています。それぞれの特徴を教えてください。

 それぞれの特徴は下記詳細解説をご参照いただくとして、両者の一番の違いは、所有形態です。不動産投資において最も重要な物件の選択と併行して、所有形態を選択することにより、ご自身に適した不動産投資が明確になると考えます。

1.不動産小口化商品とは

 不動産小口化商品とは、不動産特定共同事業法に基づき、複数の投資家から集めた資金にて収益不動産等を購入し、その不動産の運用収益を投資家に分配する商品です。簡単にいえば、分譲マンションの部分専有(区分所有)に対し、不動産小口化商品は全体共有ということになります。

※オフィス又は商業ビルの区分所有権に投資している不動産小口化商品もあります。
※不動産小口化商品は、任意組合型の特徴です。
2.分譲マンションの特徴

 投資商品としての分譲マンションの特徴は、以下のとおりです。良いと思われる場合は「○」、そうでない場合は「×」を文頭につけています。

  • ○ 相続税評価額は投資額を大幅に下回る(投資額の半分以下になるケースが多い)。
  • ○ 自身の意思で運用(賃貸・売却等)することができる。
  • ○ 担保を設定し、借入することができる。
  • × 手間がかかる。
  • × 投資単位が高額となる(中古物件で1戸あたり1,000万〜2,000万円)。
  • × 入居者が退去した場合、一定期間収支がマイナスとなる。
3.不動産小口化商品の特徴

 不動産小口化商品の特徴は、以下のとおりです。こちらも良いと思われる場合は「○」、そうでない場合は「×」を文頭につけています。

  • ○ 不動産の共同所有となり、税務上も不動産として扱われるため、相続税評価額は投資額を大幅に下回る(投資額の半分以下になるケースが多い)。
  • ○ 限られた資金(1口あたりの金額は100万〜1,000万円)で、安定した運用が期待できる優良不動産(都心の不動産等)への投資が可能となる。
  • 〇 分譲マンションより投資単位が少額となるケースが多く、分散投資(複数商品を購入)が容易である。また、贈与や遺産分割を行いやすい不動産である。
  • ○ 不動産のプロである不動産特定共同事業者が運営を担当するため、煩わしい手間がかからない。
  • × 自身の意思で運用(賃貸・売却等)することができない。
  • × 1口又は最少投資口数を共同で所有することができない。
  • × 担保を設定することができない(基本的に自己資金での投資となる)。

 それぞれ一長一短があり、万人にとって一方が必ず優れているということはありません。個人的には、手間を惜しまず自身で不動産賃貸経営を行ってみたい方には分譲マンション、手間が少なく又は少額で不動産賃貸経営を行ってみたい方には不動産小口化商品が、それぞれ適していると考えます。なお、相続対策を考慮して投資される方の多くは、手間が少ないとの理由で不動産小口化商品を選択されます。

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