お知らせ

 京都府福知山の高校生が考案した新メニューを、
 カレーハウスCoCo壱番屋の福知山店が期間限定で販売しています。
 共同開発メニューの販売は昨年から始まり、
 好評だったことから今年も行わることになったそうです。

 調理系列の2年生が一組数人で18グループを作り、
 ココイチのカレーに合う商品を2カ月かけて試作しました。
 店で実際に調理して従業員らが試食、
 味や見た目、コンセプトの面白さなどで審査し、
 「麻婆なすカレー」と「串カツカレー」が採用されました。

 誰でも真似が出来るはずのカレー専門店に、
 屋台骨を揺るがすほどの強豪が登場しなかったことを、
 創業者の宗次徳二氏は、ソフト(面)の質が影響していると語っています。 

 愛知県の小さな町で、カレーの専門店として創業したCoCo壱番屋、
 真似るのは簡単と、大小様々な競争相手が現れましたが、
 ついに肩を並べる相手は残れませんでした。

 しかし、一度だけ、同社など一息で飛ばされそうな、
 大手企業が参入してきた事がありました。
 カレーやお米など、その気になればいつでも手に入れることができる材料です、
 作り方も主婦のほうが上手なほどで、たいした技術は必要ありません。

 メニューの構成や品揃え、価格設定、販促の仕方など、
 大手ならばお手のものであるはずです。 
 更に、店舗の内外装についても、真似することはいとも簡単、
 それ以上のデザインを考えることも出来なくはないのです。

 お金さえかければ、表面的なことはそっくり真似することはできます。
 どうしても競合が真似できないこと、それはソフトです。
 宗次氏がカレー専門店を始める前に喫茶店を開いていた当時から、
 長年にわたり培った「お客様第一主義」は一朝一夕には手に入りません。

 カレー専門店を始める前に開いていた喫茶店では、
 名古屋名物の(無料)モーニング・サービスの提供はしなかったのです。
 トーストやサラダ、ピーナッツなども、全て「有料」としたのです、
 その事に文句をつけるお客はいましたが、それでも店は繁盛しました。

 また、一号店をオープンしてから長い間、
 店を構えられるのは一流には程遠い、ほとんどが二流以下の場所でした。
 さらに、良い場所が手に入らない代わりに、派手に宣伝をしたいと思っても、
 先立つ資金のゆとりもなく断念せざるを得ませんでした。

 無いない尽くしの苦肉の策として、
 笑顔の対応や丁寧な言葉遣い、感謝を込めた接客態度など、
 来店して下さったお客様に出来る限り満足してもらえるよう工夫を重ねたのです。
 そのことがクチコミで伝わり、店を支えたのは言うまでもありません。

 辛い思い、苦い経験を経て体で学んだ、経営のノウハウは、
 海外展開にも生かされています。
 成功体験があるからといって、自己流を無理やり進めるのではなく、
 顧客が求めているのは何かを、真剣に考えてこそベストなものが見つかるのです。

 今回は相談事例を通じて、株式の相続についてご紹介します。

 夫である甲が先日死亡しました。甲はA株式会社(以下、A社)の代表取締役兼A社株式を100%保有している株主でした。相続人は妻である私(乙)と長男の丙のみです。
 丙を後継者としてA社の代表取締役に選任したいと考えていますが、どのように手続きすればよいでしょうか。なお、遺言はなく、遺産分割協議も済んでおりません。また、甲はA社の唯一の取締役でした。

 まず、乙と丙で協議し、A社株式の権利行使者一人を定め、会社に通知します(会社法106条)。その後、権利行使者が株主総会に出席し、丙を取締役に選任します。


1.権利行使者について

 甲が死亡し、A社株式が相続人乙と丙に相続された場合、当然に法定相続分の割合で相続されるのではなく、準共有状態となります。準共有状態の場合、株式の権利行使者を一人定めて、株式会社へその者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式の権利行使ができないとされています。

 従いまして、ご相談のケースでは乙と丙の協議のもと、権利行使者一人を定めて会社へ通知する必要があります。また、権利行使者の指定は共有物の管理に該当するとされているため、持分価格の過半数をもって決するとされています。よって、乙と丙どちらか一方の独断で権利行使者を指定し会社へ通知することはできませんのでご留意ください。

 遺産分割協議が完了しましたら、別途、株式の名義書換が必要になってきますので、忘れないようにご対応ください。

2.株主総会の招集手続きを経ていない株主総会の開催について

 ご相談のケースでは、甲が唯一の取締役であるため、株主総会の招集決定及び株主総会の招集通知を行うことができません。

 この場合、株主総会の有効性に疑義が生じますが、判例の考え方として、株主総会の招集手続きを欠く場合であっても、株主全員がその開催に同意して出席した株主総会は有効に成立するとされています(最判昭和60年12月20日)。

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 遺産分割の民法改正に伴い、相続税の申告期限は改正されましたか?

 遺産分割について「10年」を経過すると、基本的には法定相続分とする民法改正がありましたが、これに伴い相続税の申告期限が改正されましたか?

 ご相談の民法改正に伴う相続税の申告期限の改正は、行われていません。

1.遺産分割に関する民法改正

 これまで、遺産分割については、相続開始(被相続人の死亡)時から何年経過した後に行っても、分割方法に違いが生じなかったことから、早期に遺産分割の協議または請求をすることにつき、インセンティブが働きにくい状態でした。

 しかし、遺産分割がされないまま相続が繰り返され、多数の相続人により遺産が共有されると、遺産の管理や処分が困難となり、そのような状態下で相続人の一部が所在不明となることが、所有者不明土地が生じる原因の一つとなっていました。そこで、所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しとして、遺産分割に関する民法の規定が改正されることになりました。

 たとえば、具体的相続分(※)による遺産分割に時的限界が設けられ、相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として具体的相続分ではなく、法定相続分によることになりました(合意があれば、10年経過後でも具体的相続分による遺産分割は可能です)。この改正は、経過措置を除き、令和5年(2023年)4月1日に施行されます。

 (※)具体的相続分とは、民法であらかじめ定められている画一的な割合である法定相続分を、事案ごとに修正して算出する割合であり、特別受益や寄与分などを踏まえて算定されるものをいいます。

2.相続税の申告納税期限

 相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10ヶ月以内に行うこととされています。

 たとえば、10月10日に死亡した場合には、翌年8月10日が申告期限となります(この期限が土曜日・日曜日・祝日の場合には、これらの日の翌日が申告期限です)。

 この「10ヶ月」という期限は、上記1.の民法改正が行われても変わりません。

 なお、相続税の納税期限は、上記申告期限と同一です。

3.未分割の場合の相続税の申告納税期限

 相続税の申告に際して、遺産分割協議が調わない場合(いわゆる「未分割の場合」)であっても、申告納税期限に変更はありません。未分割のまま申告納税を行います。

 未分割での申告納税とは、相続財産を法定相続分で相続したものとみなして申告納税を行うことを指します。

 その際には、相続税が減額できる「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額の軽減」を適用することができません。

 その後に分割が行われた場合は、実際に相続した財産、かつ、これらの減額を適用した後で相続税を計算し直すため、結果的には相続税を減額することはできますが、一時的にしろ未分割の状態での納税は、かなりの納税資金が必要となる場合があります。

 その点も良く考えて、遺産分割をお考えいただければ幸いです。

 相続に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

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 LIXILグループ、建築材料・住宅設備機器業界の最大手で、
 国内外問わず事業の拡大を積極的に進めています。
 最近では、家電量販店のエディオンとも資本業務提携を結び、
 リフォーム事業に力を注いでいます。

 同業他社は当然のことながら、他業種からもライバルが出現する中で、
 価格競争に埋もれてしまわないよう商品開発に力を入れています。
 買収したドイツ企業のデザイナーや国内電機メーカーの出身者を要職に迎え、
 消費者ニーズをデザインに生かし、選ばれる商品を目指します。

 同グループの中核企業のひとつとなる(旧)トステム、
 現在ではひとつのブランドとして展開されていますが、
 アルミサッシの分野では、国内シェアトップを誇ります。
 ごくあたり前となったアルミサッシも、
 60、70年代にわたる団地建設ブームに乗り、一気に広がった建具のひとつです。

 当時、木製の建具から新しいアルミ製へ切り替えの需要を期待して、
 各地に大小のメーカーが乱立します。
 業界は珠玉入り乱れた状態となり、各社があれこれ知恵を絞り、
 存続を賭けシェア争いが繰り広げられたのでした。
 
 トステムの創業者 潮田健次郎氏は家業を引き継ぎ、木製建具の小売を始めます。
 程なくして、もっと大きな商いをしたいという思いで、
 建具の問屋業も始めたところ、戦後の住宅需要のおかげもあり、
 都内に4店舗を構えるまでに成長します。

 それでも飽き足らず、自ら商品を作り出すメーカーの魅力に取り付かれ、
 全財産をはたいて工場を買い取り、建具の製造に乗り出すのです。
 いざ始めてみると、家内工業的な建具は大量生産には向かず、
 毎月、金策に走り回る生活に陥ってしまいます。

 そんな窮地から立ち直れたのは、現場の取り付け作業を簡素化した
 「スピード雨戸」が予想外にヒットしたおかげでした。
 当時のアルミサッシの価格は、木製の5倍から10倍もしていたのですが、
 近いうちに、この状態は逆転するだろうと予想していた潮田氏は、
 溜まった赤字を一掃し、アルミサッシの業界に参入を試みたのです。

 既に、業界には旧財閥系の大手が参入してきていたので、
 木製建具のメーカーとは規模の点で雲泥の差がついていました。
 同じやり方で勝負しても、到底勝ち目はないだろうと見ていたので、
 大手にはできない方法をじっくりと考えました。

 大手メーカーが作るサッシは、アメリカの技術をそのまま取り入れため、
 規格が決まっていて、日本の木造住宅によくある、
 わずかな誤差に対応できていなかったのです。

 そこで、トステムでは寸法を微調整できるサッシを開発しました。
 少し考えれば出てきそうなアイデアではありましたが、
 大企業のような硬直化した体制の中からは生まれてこなかったのでしょう。
 それには、木製の建具製造に四苦八苦した経験が役に立ちました。

 製品に目処がついたものの、肝心のアルミの仕入については手付かずだったのです。
 そこで、販売先の開拓に遅れていて、
 安定的な提供先を求めているだろうと見当をつけ。
 アルミの精錬に参入して日が浅いメーカーにアプローチを試みます、
 
 見事、その目論見は的中し、新商品と原料の供給源を確保することができます。
 後発であるにもかかわらず、
 飛躍的にアルミサッシの販売を広げることが出来たのは、
 原料メーカーとパートナーシップを結べたことが最大の勝因だったのです。

 令和4年分路線価の特徴をコロナ禍の影響を踏まえて教えてください。

 令和4年分の路線価が発表されたというニュースを見ました。今回の結果の特徴について、特にコロナ禍の影響を踏まえて教えてください。

 令和3年分と比べると、路線価は全体的に持ち直しつつあります。新型コロナウイルス感染症拡大の影響が徐々に緩和され、標準宅地の平均変動率は全国平均で2年ぶりに上昇しました。

1.路線価とは

 路線価は、相続税や贈与税の申告の便宜及び課税の公平を図る観点から、国税局が毎年公表しているもので、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額をいいます。

 路線価の評価は毎年1月1日時点で、1年間の地価変動などを考慮し、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定められています。令和4年分の路線価は令和4年7月1日に公表されました。

 なお令和4年分とは、令和4年1月1日から令和4年12月31日までの期間に係る年分をいい、この間に発生した相続や贈与により取得した土地の相続税や贈与税は、令和4年分の路線価に基づき評価することになります。

2.令和4年分路線価の特徴

 令和4年分の路線価の特徴について見てみましょう。以下は都道府県ごとの対前年変動率の平均値です。

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響が大きかった令和3年分の路線価と比べると、影響が徐々に緩和されたことから標準宅地の平均変動率は全国平均で2年ぶりに上昇し、前年の0.5%のマイナスから0.5%のプラスに転じました。

 前年変動率がプラスとなったのは、北海道(4.0%)、福岡県(3.6%)、宮城県(2.9%)など20都道府県、残りの27県はマイナスとなりました。

3.都道府県庁所在地の最高路線価

 次に、都道府県庁所在地の最高路線価のうち上位10都市について見てみると、コロナ禍前に地価上昇を牽引したインバウンド需要は依然として回復しておらず、インバウンドの影響により地価が上昇していた大阪や神戸は下落傾向が続いています。一方で、北海道新幹線の開業を控え、複数の大規模な再開発が予定されている札幌の上昇率が大きくなっています。

 全体的には、コロナ禍が最悪の状況を脱したこと、景況感の改善や低金利環境の継続などの要因により前年と比べると上昇した地点が多く、路線価は全般的には持ち直しつつあるといえそうです。

 なお、路線価は毎年1月1日時点の評価であることから、令和4年分の路線価にはロシアによるウクライナ侵攻や中国のロックダウンによる原材料不足や高騰の影響は反映されていません。また、過度なインフレ抑制のため欧米各国は利上げを実施していますが、日本は大規模な金融緩和政策を継続しており、このことが円安の原因となっている一方、我が国の不動産市場を下支えしているという見方もできます。

 したがって、今後の地価動向は、金融政策の行方によって大きな影響を受けることも想定されることから、今後の推移を注意深く見守る必要がありそうです。

<参考>
 国税庁HP「路線価図・評価倍率表ホームページ

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 掛け捨ての生命保険は、財産債務調書の報告対象となるのでしょうか?

 夫から、「財産債務調書の提出が必要となるため、財産の内訳を確認してほしい」と言われました。預貯金や不動産、有価証券は把握できているのですが、掛け捨ての生命保険(保険金支払事由が発生しておらず解約返戻金もない保険)も対象になるのでしょうか?
 また、財産債務調書の提出にあたり、契約している保険についてどこに何を確認すればよいでしょうか。他にも注意事項があれば教えてください。

 保険金支払事由が発生しておらず、解約返戻金もない掛け捨ての生命保険は、財産債務調書の報告対象外です。他方、解約返戻金が発生する契約については対象となるため、加入している保険会社や取扱代理店に、解約返戻金額を確認する必要があります。

1.財産債務調書とは

 一定の所得金額を超える所得税の確定申告書を提出する方で、一定の財産額を保有されている場合など提出対象となる方は、その年の12月31日時点で所有する自己の財産や債務の内容、価額などを記載した書類を、定められた期限までに提出する義務があります。この提出する書類のことを「財産債務調書」といい、このような制度のことを「財産債務調書制度」といいます。

 財産債務調書制度には、提出すべき人が提出するように促すための措置として、提出している場合のペナルティの軽減措置や、逆に提出していない場合のペナルティの加重措置が講じられています。

2.掛け捨ての生命保険は財産債務調書の報告対象となるのか

 国税庁は、「財産債務調書の提出制度(FAQ)(令和元年12月)」で以下のように回答しています。

 保険(共済を含む。)に関する権利の価額は、その年の12月31日にその生命保険契約を解約することとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額をその財産の価額とします(通達6の2-9(13)イ)。
 なお、加入している生命保険契約が、満期返戻金を定期金(年金形式)で受け取ることができる内容のものであっても同様の方法により価額を算定します。

 上記の通り、生命保険契約を解約することとした場合に支払われる解約返戻金の金額を財産債務調書の報告対象としているため、掛け捨ての生命保険(保険金支払事由が発生しておらず解約返戻金がない保険)は対象となりません。

3.財産債務調書の提出にあたり
(1)どこに何を確認すればよいのか

 加入されている保険契約(損害保険、共済も含む)のうち、解約した場合に解約返戻金が発生する契約について12月31日時点の解約返戻金額をそれぞれ確認する必要があります。
 解約返戻金の金額は、加入している保険会社のコールセンターや取扱代理店にお問い合わせいただくことで、確認ができます。

 なお、保険会社によっては、回答に少し時間を要する場合もあるため、期日に余裕を持ってご確認いただくとよいでしょう。

(2)注意事項

 以下は記入が漏れる場合が多いため、ご注意ください。

  • 相続により引き継いだ保険契約
  • すでに保険料の払い込みが完了している契約で、満期日や受取開始日が到来していない養老保険や個人年金保険等

 保険契約が多い場合は、契約者や被保険者ごとに保険内容(保険会社、契約日、保障内容、保険料、特約内容等)を一覧にまとめるとよいでしょう。一覧にすることで全体像が認識しやすくなるため、財産債務調書の観点だけではなく、保障の過不足を認識できる、保険金請求時に請求漏れを防止できる等のメリットがあります。

 また、保険契約後かなり年数が経過していると、保険金受取人がすでに他界していた・疎遠になったケースも見受けますので、見直すよい機会にもなるでしょう。いざ相続となったときに、受け取ってほしい人に確実に保険金が渡せるよう、定期的な見直しにも役立ちます。

 財産債務調書や保険の見直しに関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

 

 

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 新型コロナ感染症拡大の影響が大きかった業種のひとつに外食産業があげられます。
 3年を経過しても繰り返す感染拡大の波、
 それに加えて、ウクライナ戦争や円安による原料高、人件費の高騰が重なり、
 もうこれ以上耐えきれないと悲鳴を上げています。

 ファミリーレストラン大手のすかいらーくは、
 ロードサイド店を中心に100店程度の店舗を閉店すると発表しました。
 これまでも不採算店を中心に閉店を進めてきているので、
 業績悪化の深刻さがうかがえます。

 一方、関西圏中心に店舗を展開する餃子の王将は、
 メニューの見直しやテイクアウトの充実が功を奏したのか、
 コロナ禍にあっても、過去最高の売上を更新するなど、
 業界内でも勝ち負けの差が表れてきています。

 王将が一号店を開業したのは、
 外食チェーンが産声を上げた時期と重なる67年。
 3年後の大阪万博を境にして、各店の出店ブームが訪れるのですが
 京都の地で、じわりじわりと店舗数を増やしていったのが王将だったのです。

 それは、繁華街を中心に出店するハンバーガーショップや、
 郊外に大きな駐車場を構えたファミリーレストランとは
 大きく印象が違っていました。

 学生が多く集まる飲食街や下町の商店街に、
 決して大きな店舗でなく、
 どこにでもある中華料理店といった風情の店がほとんどでした。

 直営店なのか、フランチャイズ店かに係わらず、
 チェーン店といった感じではなく「暖簾わけ」した店のようでした。

 90年代には、席数が多くあるロードサイドの店舗には、
 回転寿司を併設した店やいけす料理を提供する店も出店していました。
 今から思えば、奇妙なコラボレーションのような気がしますが、
 当時の流行を取り入れ売上の落ち込みを補おうとしていたのでしょう。

 外食チェーンの多くがセントラルキッチンを設け、
 できる限りそこで調理を済ませ、
 味の標準化とコストの削減に力を注いでいます。

 関西圏以外の方でも、足を運んだ方ならご存知かと思いますが、
 王将のスタイルは、かなり違っています。
 下味が付いたメニューを除いて、
 味付けは店の厨房の調理人が行っています。

 看板メニューの餃子も、餡を皮に包むのは店の役割で、
 味のばらつきも含めて手作りの味わいがあるのです。
 
 この時期に、店舗内調理にこだわる王将に注目が集まるのは、
 均一化されたメニューと味付けに気づいてきたからなのでしょうか。
 ファミリーレストランの雄、
 すかいらーくが事業転換を迫られているのも、
 行き過ぎた効率化(?)のツケなのかもしれません。

 今回は相談事例を通じて、熟慮期間経過後に発覚した借金の相続放棄についてご紹介します。

 隣町の町役場から納税義務承継通知書が届きました。内容を確認したところ、20年来没交渉であった父が亡くなったとのことです。
 法定相続人は母と子である私と妹の3名になりますが、母と妹も私と同様にこの20年間、父とは一切関わりはありません。通知書に記載のある金額については母が支払ったものの、その他の父の財産については何も分かりませんでしたので、相続に関し、特にそれ以上の対応はしませんでした。
 ところが、3ヶ月ほど経過した後、消費者金融から父が借り入れたとする計300万円の支払督促が届きました。どうやら、父は行方をくらました後に借金を作っていたようです。とてもではないですが払える金額ではないので、相続人全員で相続放棄をしたいと考えています。果たして可能でしょうか。

 相続放棄に関して、民法第915条1項は「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、……放棄しなければならない。」と期限を定めています。そのため、相続の開始を知ったとき(=納税義務承継通知書を受領した時点)からすでに3ヶ月の熟慮期間が経過しているご質問のケースでは、原則として相続放棄を行うことはできないようにも思われます。

 もっとも判例は、相続人が負の相続財産である被相続人の保証債務の存在につき、相続の開始を知ってから1年後に認識するに至ったという事案において、相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信じるにあたり相当な理由がある場合には、当該保証債務の存在を認識した時または通常認識し得た時を相続放棄の熟慮期間の起算点とすることを認めています(最判昭和59年4月27日民集38巻6号698頁)。

 この点、ご質問のケースは相続財産が全く存在しないと信じていたのではなく、そもそも被相続人にいかなる財産があったのかを認識していなかったのであり、上記の判例とは事情を異にしています。しかし、相続人に対し相続財産の内容を把握した上で放棄すべきか否か判断する機会を与えるのが判例の趣旨だとすれば、今回のケースにおいても貸金債務の存在を認識した時点からの起算が認められる可能性はあるといえます。
 したがって、相談者様の相続放棄についても認められる可能性があります。

 ただ、相続放棄にあたっては、相続の発生を知ってから3ヶ月以内に申述するのが原則的なルールとなりますので、例外的に3ヶ月経過後の相続放棄を認めてもらうためには、申述書において、(1)いつ相続の開始を知ったのか、(2)どのような理由によって3ヶ月以内での相続放棄ができなかったのか、言葉を尽くして説明する必要があります。

 なお、相談者様のお母様は被相続人の税金を支払っていますが、お母様がご自身の財産でこれを支払う分には、法定単純承認事由としての「処分行為」(民法第921条1号本文)にあたらないため、相続放棄ができなくなるものではないと考えます。

 

 

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 2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられましたが、事業承継税制の適用はどうなりますか?

 今年(2022年)3月に高校を卒業して4月に大学生になった孫(18歳)へ、私が経営している会社(非上場会社)の株式を年末あたりに贈与しようと思います。
 『事業承継税制』なるものを利用すれば贈与税が免除されると聞いたので、利用したいのですが可能でしょうか。

 2022年4月1日以後の『事業承継税制』の適用に係る贈与に関しては、年齢要件が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられましたので、年齢要件としては満たされます。ただし、その他の要件が満たされるか否かの判断が必要です。

1.事業承継税制とは

 後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度があります。これを「法人版事業承継税制」といいます。

 ご質問の『事業承継税制』は、この「法人版事業承継税制」を指します。

 法人版事業承継税制を適用するには、様々な要件を満たさなければなりません。その1つが受贈者の要件です。

 受贈者の主な要件として、贈与のときにおいて、次のすべての要件を満たす必要があります。

  • 会社の代表権を有していること
  • 18歳以上であること
  • 後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有することとなること
  • 一定の議決権数を後継者が保有することとなること
2.成年年齢引下げに伴う改正

 受贈者の年齢要件は、2022年3月31日以前の贈与については「20歳以上」でした。

 これは民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴う改正です。

 贈与税の特例税率の適用とは異なり、贈与の日における年齢で判断することとなるため、注意する必要があります。

3.ご相談のケース

 ご相談のケースは、年末に贈与の予定とのことですので、上記受贈者の要件のうち年齢要件としては満たされますが、その他の要件を満たすのかをご確認ください。

 なお、受贈者の要件の他、贈与者の要件、会社の要件、円滑化法の認定など様々な要件があります。事業承継税制に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

<参考>
 国税庁HP「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし(令和4年5月)」PDF、「民法の改正(成年年齢引下げ)に伴う贈与税・相続税の改正のあらまし」PDFなど

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2022年8月1日

夏季休業日のご案内

弊事務所では、下記期間を休業とさせて頂きますのでご案内いたします。

休業期間中は何かとご不便をお掛けすることと存じますが、
何卒よろしくお願い申し上げます。

■夏季休業日 8月11日(木)~8月16日(火)

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