お知らせ

 掛け捨ての生命保険は、財産債務調書の報告対象となるのでしょうか?

 夫から、「財産債務調書の提出が必要となるため、財産の内訳を確認してほしい」と言われました。預貯金や不動産、有価証券は把握できているのですが、掛け捨ての生命保険(保険金支払事由が発生しておらず解約返戻金もない保険)も対象になるのでしょうか?
 また、財産債務調書の提出にあたり、契約している保険についてどこに何を確認すればよいでしょうか。他にも注意事項があれば教えてください。

 保険金支払事由が発生しておらず、解約返戻金もない掛け捨ての生命保険は、財産債務調書の報告対象外です。他方、解約返戻金が発生する契約については対象となるため、加入している保険会社や取扱代理店に、解約返戻金額を確認する必要があります。

1.財産債務調書とは

 一定の所得金額を超える所得税の確定申告書を提出する方で、一定の財産額を保有されている場合など提出対象となる方は、その年の12月31日時点で所有する自己の財産や債務の内容、価額などを記載した書類を、定められた期限までに提出する義務があります。この提出する書類のことを「財産債務調書」といい、このような制度のことを「財産債務調書制度」といいます。

 財産債務調書制度には、提出すべき人が提出するように促すための措置として、提出している場合のペナルティの軽減措置や、逆に提出していない場合のペナルティの加重措置が講じられています。

2.掛け捨ての生命保険は財産債務調書の報告対象となるのか

 国税庁は、「財産債務調書の提出制度(FAQ)(令和元年12月)」で以下のように回答しています。

 保険(共済を含む。)に関する権利の価額は、その年の12月31日にその生命保険契約を解約することとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額をその財産の価額とします(通達6の2-9(13)イ)。
 なお、加入している生命保険契約が、満期返戻金を定期金(年金形式)で受け取ることができる内容のものであっても同様の方法により価額を算定します。

 上記の通り、生命保険契約を解約することとした場合に支払われる解約返戻金の金額を財産債務調書の報告対象としているため、掛け捨ての生命保険(保険金支払事由が発生しておらず解約返戻金がない保険)は対象となりません。

3.財産債務調書の提出にあたり
(1)どこに何を確認すればよいのか

 加入されている保険契約(損害保険、共済も含む)のうち、解約した場合に解約返戻金が発生する契約について12月31日時点の解約返戻金額をそれぞれ確認する必要があります。
 解約返戻金の金額は、加入している保険会社のコールセンターや取扱代理店にお問い合わせいただくことで、確認ができます。

 なお、保険会社によっては、回答に少し時間を要する場合もあるため、期日に余裕を持ってご確認いただくとよいでしょう。

(2)注意事項

 以下は記入が漏れる場合が多いため、ご注意ください。

  • 相続により引き継いだ保険契約
  • すでに保険料の払い込みが完了している契約で、満期日や受取開始日が到来していない養老保険や個人年金保険等

 保険契約が多い場合は、契約者や被保険者ごとに保険内容(保険会社、契約日、保障内容、保険料、特約内容等)を一覧にまとめるとよいでしょう。一覧にすることで全体像が認識しやすくなるため、財産債務調書の観点だけではなく、保障の過不足を認識できる、保険金請求時に請求漏れを防止できる等のメリットがあります。

 また、保険契約後かなり年数が経過していると、保険金受取人がすでに他界していた・疎遠になったケースも見受けますので、見直すよい機会にもなるでしょう。いざ相続となったときに、受け取ってほしい人に確実に保険金が渡せるよう、定期的な見直しにも役立ちます。

 財産債務調書や保険の見直しに関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

 

 

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 新型コロナ感染症拡大の影響が大きかった業種のひとつに外食産業があげられます。
 3年を経過しても繰り返す感染拡大の波、
 それに加えて、ウクライナ戦争や円安による原料高、人件費の高騰が重なり、
 もうこれ以上耐えきれないと悲鳴を上げています。

 ファミリーレストラン大手のすかいらーくは、
 ロードサイド店を中心に100店程度の店舗を閉店すると発表しました。
 これまでも不採算店を中心に閉店を進めてきているので、
 業績悪化の深刻さがうかがえます。

 一方、関西圏中心に店舗を展開する餃子の王将は、
 メニューの見直しやテイクアウトの充実が功を奏したのか、
 コロナ禍にあっても、過去最高の売上を更新するなど、
 業界内でも勝ち負けの差が表れてきています。

 王将が一号店を開業したのは、
 外食チェーンが産声を上げた時期と重なる67年。
 3年後の大阪万博を境にして、各店の出店ブームが訪れるのですが
 京都の地で、じわりじわりと店舗数を増やしていったのが王将だったのです。

 それは、繁華街を中心に出店するハンバーガーショップや、
 郊外に大きな駐車場を構えたファミリーレストランとは
 大きく印象が違っていました。

 学生が多く集まる飲食街や下町の商店街に、
 決して大きな店舗でなく、
 どこにでもある中華料理店といった風情の店がほとんどでした。

 直営店なのか、フランチャイズ店かに係わらず、
 チェーン店といった感じではなく「暖簾わけ」した店のようでした。

 90年代には、席数が多くあるロードサイドの店舗には、
 回転寿司を併設した店やいけす料理を提供する店も出店していました。
 今から思えば、奇妙なコラボレーションのような気がしますが、
 当時の流行を取り入れ売上の落ち込みを補おうとしていたのでしょう。

 外食チェーンの多くがセントラルキッチンを設け、
 できる限りそこで調理を済ませ、
 味の標準化とコストの削減に力を注いでいます。

 関西圏以外の方でも、足を運んだ方ならご存知かと思いますが、
 王将のスタイルは、かなり違っています。
 下味が付いたメニューを除いて、
 味付けは店の厨房の調理人が行っています。

 看板メニューの餃子も、餡を皮に包むのは店の役割で、
 味のばらつきも含めて手作りの味わいがあるのです。
 
 この時期に、店舗内調理にこだわる王将に注目が集まるのは、
 均一化されたメニューと味付けに気づいてきたからなのでしょうか。
 ファミリーレストランの雄、
 すかいらーくが事業転換を迫られているのも、
 行き過ぎた効率化(?)のツケなのかもしれません。

 今回は相談事例を通じて、熟慮期間経過後に発覚した借金の相続放棄についてご紹介します。

 隣町の町役場から納税義務承継通知書が届きました。内容を確認したところ、20年来没交渉であった父が亡くなったとのことです。
 法定相続人は母と子である私と妹の3名になりますが、母と妹も私と同様にこの20年間、父とは一切関わりはありません。通知書に記載のある金額については母が支払ったものの、その他の父の財産については何も分かりませんでしたので、相続に関し、特にそれ以上の対応はしませんでした。
 ところが、3ヶ月ほど経過した後、消費者金融から父が借り入れたとする計300万円の支払督促が届きました。どうやら、父は行方をくらました後に借金を作っていたようです。とてもではないですが払える金額ではないので、相続人全員で相続放棄をしたいと考えています。果たして可能でしょうか。

 相続放棄に関して、民法第915条1項は「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、……放棄しなければならない。」と期限を定めています。そのため、相続の開始を知ったとき(=納税義務承継通知書を受領した時点)からすでに3ヶ月の熟慮期間が経過しているご質問のケースでは、原則として相続放棄を行うことはできないようにも思われます。

 もっとも判例は、相続人が負の相続財産である被相続人の保証債務の存在につき、相続の開始を知ってから1年後に認識するに至ったという事案において、相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信じるにあたり相当な理由がある場合には、当該保証債務の存在を認識した時または通常認識し得た時を相続放棄の熟慮期間の起算点とすることを認めています(最判昭和59年4月27日民集38巻6号698頁)。

 この点、ご質問のケースは相続財産が全く存在しないと信じていたのではなく、そもそも被相続人にいかなる財産があったのかを認識していなかったのであり、上記の判例とは事情を異にしています。しかし、相続人に対し相続財産の内容を把握した上で放棄すべきか否か判断する機会を与えるのが判例の趣旨だとすれば、今回のケースにおいても貸金債務の存在を認識した時点からの起算が認められる可能性はあるといえます。
 したがって、相談者様の相続放棄についても認められる可能性があります。

 ただ、相続放棄にあたっては、相続の発生を知ってから3ヶ月以内に申述するのが原則的なルールとなりますので、例外的に3ヶ月経過後の相続放棄を認めてもらうためには、申述書において、(1)いつ相続の開始を知ったのか、(2)どのような理由によって3ヶ月以内での相続放棄ができなかったのか、言葉を尽くして説明する必要があります。

 なお、相談者様のお母様は被相続人の税金を支払っていますが、お母様がご自身の財産でこれを支払う分には、法定単純承認事由としての「処分行為」(民法第921条1号本文)にあたらないため、相続放棄ができなくなるものではないと考えます。

 

 

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 2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられましたが、事業承継税制の適用はどうなりますか?

 今年(2022年)3月に高校を卒業して4月に大学生になった孫(18歳)へ、私が経営している会社(非上場会社)の株式を年末あたりに贈与しようと思います。
 『事業承継税制』なるものを利用すれば贈与税が免除されると聞いたので、利用したいのですが可能でしょうか。

 2022年4月1日以後の『事業承継税制』の適用に係る贈与に関しては、年齢要件が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられましたので、年齢要件としては満たされます。ただし、その他の要件が満たされるか否かの判断が必要です。

1.事業承継税制とは

 後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度があります。これを「法人版事業承継税制」といいます。

 ご質問の『事業承継税制』は、この「法人版事業承継税制」を指します。

 法人版事業承継税制を適用するには、様々な要件を満たさなければなりません。その1つが受贈者の要件です。

 受贈者の主な要件として、贈与のときにおいて、次のすべての要件を満たす必要があります。

  • 会社の代表権を有していること
  • 18歳以上であること
  • 後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有することとなること
  • 一定の議決権数を後継者が保有することとなること
2.成年年齢引下げに伴う改正

 受贈者の年齢要件は、2022年3月31日以前の贈与については「20歳以上」でした。

 これは民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴う改正です。

 贈与税の特例税率の適用とは異なり、贈与の日における年齢で判断することとなるため、注意する必要があります。

3.ご相談のケース

 ご相談のケースは、年末に贈与の予定とのことですので、上記受贈者の要件のうち年齢要件としては満たされますが、その他の要件を満たすのかをご確認ください。

 なお、受贈者の要件の他、贈与者の要件、会社の要件、円滑化法の認定など様々な要件があります。事業承継税制に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

<参考>
 国税庁HP「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし(令和4年5月)」PDF、「民法の改正(成年年齢引下げ)に伴う贈与税・相続税の改正のあらまし」PDFなど

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2022年8月1日

夏季休業日のご案内

弊事務所では、下記期間を休業とさせて頂きますのでご案内いたします。

休業期間中は何かとご不便をお掛けすることと存じますが、
何卒よろしくお願い申し上げます。

■夏季休業日 8月11日(木)~8月16日(火)

 夏休みに入り、小さなお子様をお持ちのお父さんお母さんは、
 日中の過ごし方に、頭を悩ませる時期となりました。
 連日に亘る猛暑の中、外へ遊びに出すことも出来ず、
 家の中にいると暴れ放題…といった始末に。

 そこで、学校が休みに期間を狙って、盛んに行われているのが、
 鉄道沿線を巡る「スタンプラリー」です。
 JR各社が行っているテレビアニメを題材にした、
 スタンプラリーが有名なところでしょう。

 私鉄系のスタンプラリーでは、人気ゲームのキャラクターも加わり、
 ますます盛り上がりを見せています。
 また、今年は旧国鉄が開業して150年を、
 東急が100周年を迎える記念の年となっており、
 記念入場券の販売や特別ツアーなど様々なイベントが企画されているそうです。

 京都に電車が登場したのは、明治28年のことです。
 首都である東京に先立ち、日本初の電車として
 路面電車を走らせたことが始まりとされています。

 その後、その路面電車は京都市の公営として、
 市街地中心部および南部を走る
 「市電」として運営されるようになります。

 「嵐電」は京都市西部と市電の運行区域を結ぶ、
 交通手段として1910年に開業します。
 当時、電車を運営する会社の多くは電気の供給事業も行っており、
 嵐電も電気の供給事業会社(現在の電力会社)に吸収され、
 住民への電気供給と、交通の足として発達していく事になります。

 しかし、マイカーの普及と共に乗客数は減少を辿り、
 市電の廃業も加わり経営は日増しに苦しくなっていくのです。
 現在は、大阪市南部と京都、滋賀を結ぶ鉄道、
 「京阪電気鉄道(京阪)」のグループ会社となっています。

 明治の経済界を引っ張って活躍し、
 「銀行の父」と称された渋沢栄一氏らの掛け声の下、
 並行する国営鉄道(現在のJR)に対抗する鉄道として発足したのです。

 京阪の運営も決して順風満帆ではありませんでした。
 自社路線に並行する路線を他社に開業させることを阻止するため、
 大阪市北部から京都、奈良、和歌山を結ぶ各路線を開業しようとしましたが、
 不況により計画は頓挫し、いくつかの路線は他社に明け渡すことになります。

 一時、戦争による政府の統制により
 「阪急電鉄(阪急)」と合併することになりますが、
 戦後、再度分離する際には、残った大阪市北部から京都を結ぶ路線を、
 阪急に明け渡すことになってしまうのです。

 最初の名は、箕面有馬電気軌道という名で、
 大阪と紅葉名所や温泉地を結ぶ、遊覧鉄道と見られていました。
 しかし、その鉄道は小林一三氏の斬新なアイデアにより、
 後の阪急電鉄と変身するのです。

 新しいインフラの誕生と、直後の乱立、統合から淘汰への流れは、
 インターネットや携帯電話に係わる事業の流れと重なってしまいます。
 成長分野へ足を踏み入れることは、企業の成長にとって大切なことですが、
 その後には同じような流れがあることをお忘れなく!

 地価が上昇しているにもかかわらず地代を据え置いている場合、どのような影響をもたらすのか教えてください。

 私が所有する土地の上に、私が100%出資しているA社所有のマンションがあります。この土地の賃貸借に関して権利金の収受はなく、契約締結当時に算定した「相当の地代」を地代として収受する契約を締結しています。
 近年、マンション周辺の地価が上昇していますが、地代は改定していません。このまま地代を据え置くことに問題はありますか。
 なお、マンションは築後20年を超えて修繕箇所が増え、管理に手間がかかるため、A社を経営している息子から売却の相談があります。

 周辺の地価が上昇しているにもかかわらず「相当の地代」を改定していない場合、自然発生借地権が生じている可能性があります。この自然発生借地権は、譲渡や返還、相続等が発生したときに生じていれば課税の問題が生じますので、ご注意ください。

1.権利金

 建物の所有を目的とした土地の賃貸借契約に基づき、賃借した土地に対する賃借人(借地人)の権利部分を、「借地権」といいます。
 この賃貸借契約の締結時に、借地権を設定した対価として賃借人から賃貸人に対して支払われる金銭のことを、「権利金」といいます。
 地域の慣行として権利金の受け渡しがあるにもかかわらず行っていない場合は、原則として、権利金の認定課税が行われます。
 ただし、この受け渡しがなくても、賃貸人が「相当の地代」を収受しているときには、認定課税はされません。

2.相当の地代の算出方法

 相当の地代は、土地の時価に対しておおむね年6%程度とされています。この場合の「土地の時価」は、課税上の弊害がなければ、対象となる土地の自用地としての相続税評価額、あるいは過去3年間における相続税評価額の平均額、などにより計算することも認められています。

3.自然発生借地権

 相当の地代は、上記2.のとおり土地の時価がベースとなりますので、土地の時価が上昇した場合には、相当の地代も上昇するはずです。
 この上昇した部分を地代に反映させず、地代を据え置いた場合には、その部分の借地権が発生したものとされます。これを「自然発生借地権」といい、借地人に帰属されます。
 ただし「自然発生借地権」は、実現されるタイミング(譲渡、返還、相続などが生じる)まで課税されません。

4.設問のケース

 相談の内容から譲渡を視野に入れているとのことですので、仮に相続が開始される前に譲渡された場合に、その譲渡の時点で「自然発生借地権」が生じていれば、課税の問題が生じてきます。どのような問題が生じるのかはケースによって異なるため、ここでの説明は割愛させていただきます。

 同族間の不動産の賃貸借は、常に課税の問題が絡んできます。今回の課税の問題の詳細を含め、相当の地代の改定については、お気軽に当事務所へお問い合わせください。

<参考>
 国税庁HP「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」ほか

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 団体信用生命保険と住宅ローンの相続時の取扱いについて教えてください。

 自宅を購入するために、夫は銀行で住宅ローンを組みました。
 その際、団体信用生命保険の特約を付加したのですが、仮に夫が亡くなった場合、住宅ローンはどうなるのでしょうか。また、団体信用生命保険の保険金や住宅ローンは相続財産になるのでしょうか。

【団体信用生命保険の内容】
  • 契約者、保険金受取人:銀行(債権者)
  • 被保険者:夫(債務者)
  • 保険金額:住宅ローンの残額

 ご主人がお亡くなりになった場合、返済中の住宅ローンの残額に団体信用生命保険(以下、団信)の保険金が充当され、住宅ローンは免除されます。また、団信の保険金や住宅ローンは相続財産にはなりません。

1.相続時の団信の取扱い

 仮にご主人がお亡くなりになった場合には、住宅ローンの残額に相当する団信の保険金が銀行に直接支払われます。
 この保険金が住宅ローンの残額に充当されるためゼロとなり、以降の返済は不要となります。

 ちなみに一般的な団信は、死亡の他、高度障害状態となった場合も同様に支払われます。団信の保障内容によっては、病気やケガなどの所定の保障対象となった場合にも支払われるものがあるようです。保障範囲は確認しておかれるとよいでしょう。

2.団信の保険金や住宅ローンは相続財産になるのか
(1)団信の保険金

 相続税の計算上、被保険者である被相続人の死亡をきっかけに相続人や受遺者が受け取る死亡保険金のうち、被相続人が保険料の全部または一部を負担していたものは「みなし相続財産」として、相続税の計算の対象となります。

 団信は、契約者が銀行(債権者)であり、保険金の受取人も銀行(債権者)です。そのため、支払われた死亡保険金は「みなし相続財産」に該当しません。

(2)住宅ローン

 被相続人名義の住宅ローンの残額がある場合、相続税の計算上、債務控除の対象となります。

 しかし、団信の特約が付加されている住宅ローンの場合、上記1.のとおり、住宅ローンの残額はゼロになります。したがって、債務控除の対象となる「確実と認められる債務」にはあたらないとして、債務控除の対象とはなりません。

【参考/裁決事例】 ※昭和63年4月6日裁決
 相続税法上、債務控除ができる「確実と認められる債務」とは、債務が存在するとともに債権者の債務の履行を求める意思が客観的に認識しうる債務、または債権債務成立に至る経緯から、事実的、道義的に履行が義務付けられているという場合、すなわち、債務の存在のみならず、履行の確実と認められる債務と解される。
 本件債務は、保険金によって補填されることが確実であって、請求人の支払う必要のないものだから「確実な債務」にあたらない。また、保険金受取人はA銀行であり、乙(被相続人)が保険料を負担した事実は認められないから、請求人の主張は失当である。
 以上の理由により、本件債務は相続税の課税価格の計算上、債務控除の対象とならない。

 保険は、契約の内容によって税金の取扱いが異なります。保険に係る税金の取扱いや相続に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

 

 

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 こちら京都は、3年ぶりとなる通常通りの祇園祭を前に、
 うだる蒸し暑さが始まっています。
 食欲も落ちるこんな時は、香辛料の効いたカレーに汗を流しほおばり、
 なんとか暑さを吹き飛ばしたいと思います。

 今では、様々な種類のカレーがレトルト・パックで出回っていて、
 本格的なカレーも手軽に食べられるようになっています。
 そんなレトルトカレーの元祖「ボンカレー」は、
 テレビCMなどのマス広告を止めてからも売上げが伸びているそうです。

 「ボンカレー」の他にも、「オロナイン軟膏」「オロナミンC」、
 「ごきぶりホイホイ]「ポカリスエット」などなど、
 ヒット商品を生み出してきた大塚製薬グループ、
 そしてその創業者の大塚正士氏。
 団塊の世代の方には、懐かしい商品名、
 あわせて当時のCMが記憶によみがえる方も多いはずではないでしょうか。

 これだけのヒット商品名を生み出し、
 また何十年もの永い間人気を保ち続けています。
 当然の事ながら、その人気は簡単に手に入れられたものではなく、
 大塚氏の手緩めない猛攻勢があったからこそ成しえたものなのです。

 最初のヒット「オロナイン軟膏」の発売の時には、
 損を覚悟で小学校の生徒全員に無料サンプルを配るという
 大胆な戦略に出たのです。
 その金額は売価で1億8000万円、
 「税金で持っていかれるよりも、商品の良さを知ってもらい、
 信用を高めたい」と言う気持ちがあったにせよ、
 常識を超えた力量が現れています。

 「オロナミンC」のときには、販売ルートを薬局から一般小売店へ
 方向転換し、朝昼問わず、夜のネオン街まで売り込みに回ったのです。
 栄養ドリンクの売上が減った薬局は猛反発して、
 お蔭で「オロナイン軟膏」の売上は半分になってしまったほどでした。

 このように、リスクを怖れない大塚氏の販売戦略は、
 先発の強豪商品を追い抜くヒット商品となったのです。

 大塚氏は苛立っていました、
 「会社をもっと、大きくしたい…、
 しかし三井や住友のような財閥のようになるには、時間が足りない」
 自分一人がどれだけ一生懸命働いても、たかだか50年ほど、
 早く大きくなるにはどうしたらいいのか…

 あるとき江戸時代に廻船業で富を築いた、豪商の経営手法にヒントを得て
 本格的にグループ経営に乗り出すのです。
 豪商は新しい船が出来上がると、その度に船長を雇って仕事を任せる。
 船長には売上に対して歩合が渡されるので、必死になって働き、
 当然船主にもたくさんの利益が残ることになる。

 これを会社経営に取り入れて、グループ会社の舵取りを、
 それぞれの会社の社長に任せるとして、
 10人の社長が30年働ければ、300年分になる。
 財閥にも決して引けを取らない歴史分の仕事が一生のうちに出来ることになる。

 その経営手法に則って、設立した会社のひとつが大鵬薬品です。
 大塚グループと問屋が共同出資して出来上がった会社の社長には、
 若干32歳の若手役員を抜擢したのです。
 こうして大塚製薬はグループ売上高1兆円規模の、
 大企業へと成長を遂げたのです。

 遺産分割に関係する民法の改正が行われたと聞きました。具体的には、どのような改正なのでしょうか。

 これまで、遺産分割については、相続開始(被相続人の死亡)時から何年経過した後に行っても、分割方法に違いが生じなかったことから、早期に遺産分割の協議または請求をすることにつき、インセンティブが働きにくい状態でした。
 しかし、遺産分割がされないまま相続が繰り返され、多数の相続人により遺産が共有されると、遺産の管理や処分が困難となり、そのような状態下で相続人の一部が所在不明となることが、所有者不明土地が生じる原因の一つとなっていました。そこで、所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しとして、遺産分割に関する民法の規定が改正されることになりました。

 改正の最も重要なポイントは、具体的相続分(※)による遺産分割に時的限界が設けられ、相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として具体的相続分ではなく、法定相続分によることになったことです。

 すなわち、具体的相続分によれば、法定相続分による場合よりも多くの財産を取得することができると考える相続人は、他の相続人が得た贈与が特別受益に該当する、あるいは自分が被相続人に行った労務等の提供が寄与分にあたると主張することになりますが、遺産分割の合意ができず、そのような具体的相続分に沿った遺産分割の審判を求める場合には、相続開始時から10年以内に、家庭裁判所に遺産分割請求を行うことが必要となります(具体的相続分による遺産分割の合意は、相続開始時から10年を経過した後でも可能です)。

 なお、上記改正部分の施行日は、令和5年(2023年)4月1日となっていますが、施行日前に被相続人が死亡した場合の遺産分割についても、改正法の適用がある点に留意する必要があります(但し、経過措置により、相続開始時から10年経過時または改正法施行時から5年経過時のいずれか遅い時までに、遺産分割請求がされた場合には、具体的相続分による分割は可能とされていますので、少なくとも5年の猶予期間があります)。

 他にも、現行法では、遺産共有と通常共有が併存する場合において、共有関係を裁判で解消するには、地方裁判所等での共有物分割訴訟と、家庭裁判所での遺産分割請求を別個に実施する必要がありましたが、改正法では、相続開始時から10年を経過したときは、遺産共有関係の解消も共有物分割訴訟において実施することができるようになります。

 また、相続により不動産が遺産共有状態となったものの、相続人の中に所在等の不明なものがいて、共有関係を解消できないようなケースについて、相続開始時から10年を経過したときは、裁判所の決定を得て、相当額の金銭を供託することにより、所在等不明共有者の不動産の持分を取得することができるようになります。

 このように、改正法では遺産共有関係の解消の促進、円滑化、合理化が図られていますので、有効に活用されることが期待されます。

(※)具体的相続分とは、民法であらかじめ定められている画一的な割合である法定相続分を、事案ごとに修正して算出する割合であり、特別受益や寄与分などを踏まえて算定されるものをいいます。

 

 

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